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人財戦略とDXの共存と洗練 | 第1回

大退職時代と人的資本経営 両者に対応するための施策とは?

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 昨今、ビジネスの文脈でVUCA(不確実性)の時代などといわれるが、最も変化が激しいのは、実は「働く人」かもしれない。コロナ禍をきっかけに、テレワークや在宅勤務を実施する企業が増え、それを機会に多様な働き方を認める大きな流れができ、働くことの価値観や基準まで変わってきた。またそれと並行して、企業の価値を支え高めるものとして人財にスポットライトが当たり、取り組みの情報開示が求められるようになっている。本稿では、こうした人財に対する世界的な潮流とそれへの対応方法について解説する。

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大退職時代の日本への影響は?

 現在、ワークライフバランス意識の変革に端を発した「大退職時代」と呼ばれる社会現象が、欧米を中心に巻き起こっている。昨秋には、今後半年以内に世界中で10人に4人が退職するという調査レポートも出た[1]

 こうした現象は、日本にとっても決して対岸の火事ではない。総務省の調査によると、実際の転職者数は微減している一方で、転職希望者数は、2019年から年間平均20万人増と加速度的に増加中[2]。従来型の人財管理では、労働力の流出は避けられないだろう。

 そして同時に、とりわけ米国企業において、採用必要枠に対して応募者や候補者は多数いるにもかかわらず、採用が一向に進まないという状況が発生している。原因は明らかになっている。コロナ禍により働く人たちの“内省化”が進み、キャリアプランをライフプランと合わせて考えるようになったためだ。人生を俯瞰して考え、残された時間をどの目的のためにどう使うか、多くの人が再考し始めたのである。企業がアフターコロナの再生を果たすには、ビジネスやそのモデル要素のみならず、このような労働市場の変化を考慮し、人事戦略を念入りに定めなければならない。

 Sapient Insightsグループが実施した調査によると、人事課題に影響を及ぼす主要トレンドは、「大退職時代への突入」「労働力不足」「スキルギャップへの対応」「コロナ禍による労働環境の変化」の4つだという[3]。そのうち大退職時代については、昨年は米国を中心に話題になったが、2022年はそれが世界的に広まるといわれている。ただし、退職の動機は米国とは微妙に異なる。特にアジアやヨーロッパでは仕事を移り環境を変えることに抵抗があり、融通が利く環境やキャリアチェンジ、研修やトレーニングの機会、会社の貢献への実感など、会社に求めるものが幅広い。従業員エクスペリエンスを充実させる投資や人財戦略が、非常に重要である。

[1]: McKinsey & Company「'Great Attrition' or 'Great Attraction'? The choice is yours

[2]: 総務省統計局「労働力調査」より算出。

[3]: 【参考】ワークデイ ブログ「2022年の人事の展望:労働市場の4つのトレンドを紐解く

ESGを念頭に置いた施策が必須に

 従業員エクスペリエンスも含めた人財への投資は、異なる面からも求められている。ESG経営やISO30414による非財務情報の公開などである。

 ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を集めたもので、それぞれ次の意味がある。

Environment(環境)
企業のオペレーションやサプライチェーンなど、ビジネスそのものが環境に与える影響や、逆に温暖化など環境がビジネスに与えるリスクなど。
Social(社会)
従業員との関係、ウェルビーイング、ダイバーシティー&インクルージョンなど社内のこともあれば、地域社会や顧客、サプライヤーの労働力などへの影響など社外のこともある。
Governance(企業統治)
企業倫理、行動規範、透明性、説明責任や、リスクマネジメントと規制遵守の実践。

 ESGという概念が初めて登場したのは2000年代前半で、テーマとしては決して新しいものではない。ただ、当初は社会・倫理・環境問題(SSE)や社会的責任への投資(SRI)といった概念で、過去さまざまな業界や企業によって報告されてきた。そのため、情報開示はそれぞれの企業の間でバラツキがあった。最近は、投資家やステークホルダーがESGに価値を見出し始めたこともあり、企業はより一貫性のある情報として、ESGの取り組みを開示するようになった。少し前までは、アニュアルレポートの付属ページに1~2ページだけ掲載されていたものが、より詳細な情報や数値で記載されるようになっている。

 ESGを重視した投資に割り当てられる資本の額は、ここ数年で10倍になった。ESG評価の高い企業の株価はESG評価の低い企業よりも高くなっているという事実もあり、経営者の関心が高まるのも必然といえるだろう。さらに、ESGを意識した“戦略的”なビジネスモデルを作り、実施していることを適宜当局に開示していくような動きに対応していく必要も出てきた。当局の開示要求の基準は高まる傾向にある。

 企業のESGへの取り組みは、消費者のロイヤリティーや従業員のエンゲージメントにも大きく関係する。その観点から各社にとっては、ESGへの取り組み自体が、成長のための必須条件となってきている。もし対応しなければ、その企業を見る世間の目が変わって、人財の確保が難しくなるほか、ブランド力が低下して売上が低迷したり、最悪の場合、ペナルティーを科されたりする恐れがある。

 そして人的資本開示の観点から、ESGよりも細かく指標を定義しているのが、ISO30414である。ISO301414が掲げる指標は、経営戦略の実現を支える人的資本の価値を最大化する施策を開示して、投資家からの評価につなげる「価値向上」のための領域と、人的資本にかかる公平性のための取り組みを対外的に開示することで、投資家や従業員の要望に応えていく「リスクマネジメント」のための領域に大別できる。

 近年、後者の重要性は高まる一方だ。ビジネス環境や働き方が刻々と変化する中、企業も変革を迫られているが、それを担っているのは現場の従業員である。そのため、社内外から「あの会社で働き続けたい・働いてみたい」と思ってもらわなければならない。そこで、人的資本についての目標や達成度を数字で表現し、しかも同じ尺度で他社と比較できることが重要になってきている。その手段を提供するのが、ISO30414による情報開示である。

 ISO30414ではコンプライアンスと倫理、コストから組織文化、リーダーシップ、健康と安全、採用・異動・離職、スキルと能力、後継者計画まで11領域49項目について情報開示を求めており、まさに人的資本経営をしっかり実施しているかどうかが表される。逆の言い方をすれば、レポートのための経営ではなく、経営ゴールに連動した人財戦略の存在を問われていることは明らかで、それを結果的に数値として表現していることになる。

 つまり、女性管理職比率や離職率などを数値化できればよいというわけではないのだ。各社のビジネスゴール(経営戦略)と連動した人的資本プラン(人財戦略)にアラインされたものにする必要がある。もちろん、先行きが読めない変動要素はたくさんあって、途中での計画見直しも余儀なくされるかもしれない。しかし、ビジネスゴールやビジネスモデルとその実現を支える人財戦略を作って実行しているか、人財戦略にリンクした人的資本プラン(投資)が予定どおりに進行しているか、それらの目標達成度はどれほどかといったことを、途中経過も含めてタイムリーに開示し、説明できることが企業の価値向上につながっていく。

 興味深いのは、人的資本経営では、働く者たちの企業への期待値と、投資家や関係監督庁、市場などの企業への期待値が共通化するということだ。大退職時代への対応として従業員のエクスペリエンスやエンゲージメントを高めることが、企業価値の向上にもつながってくる。もはやそれらは企業にとって当たり前の施策であり、より高い視点で人的資本に対する戦略性とその具体的実行、成果の開示が求められる時代が来たといえるだろう。

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この記事の著者

荒井 一広(アライ カズヒロ)

ワークデイ株式会社 マーケティング本部長。外資系ITベンダーにて22年マーケティングに従事。過去に勤務した会社はいずれも“働きがいのある会社” などにて上位に位置し恵まれた職場環境での経験から、社員をエンゲージする文化や経営に強い興味を抱く。欧米で手本となっていたWorkdayの文化と製品に魅了され...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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