サービスの原点は、組織マネジメントに失敗した経験
――Talknoteが登場した2011年ころには、すでに数多くのコミュニケーションツールが存在していました。その状況下でTalknoteを開発し、リリースした動機とは何だったのでしょうか?
もともと僕は飲食店を経営していまして。2003年から始めて2005年の6月までは1店舗だけだったんですが、そこから5か月間で3店舗出店、4店舗40人くらいの規模に達しました。その後、2006年にインターネット求人サイトを立ち上げたので、さらに20人くらい採用し、5拠点で60人程度の規模にまで成長したんです。
こうして出店数は増え、売上も伸びたのですが、だんだん社内の雰囲気が良くなくなってきたのに気づいて。このままでは成果が上がらなくなる。そう危機感を覚えて原因を考えたときに、人数が増えたせいで社員1人当たりのコミュニケーション回数が減っていることに気がつきました。5人の時代は毎日2回、月50回くらい全員で食事して会話していたんですが、社員が60人にまで増えると全員と毎日ご飯食べて……というわけにはいかなくなりますからね。
そこで社員全員に僕の言葉を届け、全員からレスポンスを得られつつ会話もできる、そういう組織マネジメント向けコミュニケーションツールがないか探し始めました。でもメーリングリストとかSkypeとか、携帯メールでのメール配信、サイボウズの掲示板での情報共有、ブログ、mixiのコミュニティ……あらゆるツールを試したんですが、結局「これだ!」というものは1つもありませんでした。みんなで1か所に集まって会話しているような感覚になれるツール、そういうものがなかったんです。
そうこうしているうちに、今度はインターネット部門にいた20人ほどの社員が一斉に辞めてしまうという事件が起きました。会社に将来性を感じられなくなり、嫌になってしまったんでしょう。その影響で事業が回せなくなり、止めざるを得なくなりました。
結局、当時は5人の組織と60人の組織ではマネジメントの難易度が違うことがよく分かっていなかったんです。そして、組織の拡大スピードにコミュニケーション基盤の改善スピードが追いつかなかった。これが失敗の原因です。
――当時からユーザーがコメントを寄せ合うツールはいくつかあったかと思いますが、それらのツールでは「みんなで集まっている感覚」は得られなかったのですか?
そのころはまだFacebookもLINEもなく、リアルタイムに情報を一斉に発信できるチャットはSkypeを除くとほとんど存在していませんでした。ただ、そもそもチャットは少人数での細かいおしゃべりや会話には適しているものの、1対50人など大人数でのコミュニケーションには不向きです。
――個人が多人数相手に考えやアイデアを発信し、リアルタイムで全体に共有できるツールを求めていたけれども、条件に合致するものがなかったと。
メーリングリストを使って関係者に情報を送っているところもあると思いますが、全ての情報を共有しているとメールが1日に200通、300通にもなってしまう。その大量のメールを1通1通開封して確認するかというと、ほとんどの人はそうしません。つまり、情報を見られる状況にはあるが見ない、ということになり、「これさっきメーリングリストで流しておいたよね?」と聞いても「え、見ていません」という事態がしばしば起こります。
しかもメーリングリストだと誰がメールを見て、誰が見ていないのかが分かりません。また質問しようとしてメーリングリストに返信すると、見せる必要はない相手にまで質問が行き渡ってしまうという欠点もある。おまけにその質問は何百ものメールに埋もれ、相手のレスポンスも遅くなります。つまり、コミュニケーションの双方向性が保証されにくいんです。
――確かにメールはあくまで書類を回している感覚で、テンポ感に欠けるきらいがあります。
メーリングリストとは違い、タイムライン上に並んだ多くの質問から気になる質問だけを素早く確認、即座に返信できるツールがあればいいのに……そういった思いがTalknote開発へとつながっていったんです。