パーソル総合研究所は、シニア人材の就業実態や就業意識に関する調査結果を発表した。本調査は、70歳まで就業機会を確保する努力義務が企業に課されたことを受け、シニア人材の活躍や若手社員への影響に関する定量データを把握し、企業経営・人事に資する提言を行うことを目的に実施した。調査期間は、2021年1月6日~1月12日。シニア従業員3000人、若手従業員3000人の合計6000人から回答を得ている。
同研究所は同調査の結果について、以下のように伝えている。
定年後再雇用による年収の変化について聞いたところ、約9割の人の年収が下がっている。また、定年後再雇用で働いている人は全体平均で年収が44.3%も下がっていることが明らかとなった。再雇用者のうち約5割の人は年収が半分以下になっている。
また、再雇用者に職務の変化について聞いたところ、過半数の人が「ほぼ同様の業務」という回答だった。「ほぼ同様の業務」と回答した人も平均で年収が39.3%下がっているが、同一労働同一賃金やシニア人材のモチベーションの観点から問題といえる。
若い年代の社員ほど、シニア人材に対する不公平感が強い。20代では、シニア人材が得ている給料や評価に対して約3割が不公平感を抱いている。
シニア人材の働き方が若手社員に与える影響を見ると、仕事の不透明さがある職場では、ない職場に比べて転職意向が25.5ポイント高く、シニア人材が疎外された状況にある職場では、ない職場に比べて転職意向が26.1ポイント高かった。
また、若い年代ほど転職意向が高まる傾向にある。シニア人材の働き方は若手社員の離職にも影響しており、そうした観点でもシニア不活性化にきちんと対応すべきである。
シニア人材向けの教育・研修の実施について聞いたところ、約5割が「実施されていない」との回答であり、約2割しか満足していない結果となった。教育・研修は、就業環境の変化に伴うシニア人材の学び直しや職務との適合性、意欲の引き出しの観点から重要だが、現状は不十分といえる。
いつまで働き続けたいかについて50代と60代に分けて回答を集計したところ、60代のほうがより高い年齢まで働きたい傾向が強いことが分かった。しかし、「71歳以上生涯働けるまで」との回答割合は、50代で12.1%、60代で13.1%とほぼ変わらず、70歳まで就業機会が確保されることで、約9割の高齢者のニーズが満たされることが分かった。
所属先の企業が定めている定年の年齢について聞いたところ、「60歳」との回答が約7割だった。「定年なし」は3.4%にとどまった。
企業のシニア人材の課題については、70歳就業機会確保の努力義務という法改正への表層的な対応に終わらせることなく、人事制度や各種施策全体を見直していく必要がある。