就活中に学生はどんなクチコミを参照しているのか
――新卒入社直後から転職を視野に入れている若者がこんなにも多いという調査結果は、会社の人事管理層にとっては驚きだったと思います。そうした「今どきの若者」の入社後ギャップについて調査された理由やきっかけなどについてお聞かせください。
今回の調査レポート[1]は、当社が運営する社員クチコミサイト「OpenWork」へ、2019年以降に投稿された「入社後ギャップ」に関する社員クチコミ1万3042件を集計・分類したものです。2021年5月に公開したのですが、非常に多くの反響をいただきました。
5月といえば、以前から「5月病」という言葉があるように、新入社員だけでなく新生活を始めた人たちが何となく不調を感じる時期です。「仕事がつまらない」「将来の展望を見いだせない」など、何らかのストレスを感じる新入社員は決して少なくありません。そこで、そんな新入社員に対して、本調査の実施・発表にあたっては「そうした気持ちになるのは決してあなただけではない」ということを知ってもらいたいと考えました。
もちろん、大前提としては、受け入れ先である会社や人事、経営層に対して、「期待と現実とのギャップをなくすための努力をしてほしい」と対応を促すためという目的があるのですが、同時に新入社員、そして就活生に対しても「悔いのない就職活動をしてほしい」というメッセージを伝えられたらと考えています。
――調査から見えてきた傾向についてご説明いただけますか。
「入社後ギャップ」の調査とは別に、新入社員の全体像を調べるため、2020年入社、2021年入社、そして現在就職活動中という3つのグループで、「就職活動中にどんなクチコミを参照しているか」という傾向をまずは分析しました。
ダントツの1位は「年収」で、「何歳でどのくらいの給与になるのか」「どの職種だとどのくらい稼げるのか」といったことは、新卒だけでなく中途採用を含めたすべての層で気になるようですね。というのも、OpenWorkには年齢別や職種別で年収を可視化し、年収のミスマッチを防ぐ機能[2]があるからなのですが。
次いで2020年入社までは「ワークライフバランス」だったのが、2021年入社と今年では逆転し、「企業分析」という項目が2位につけています。というのも、近年のシビアな採用活動の中で「この会社を選んだ理由」など具体的な質問がなされる傾向があり、競合他社との比較や会社の特徴・傾向などに絡めた具体的な答えが求められているためと思われます。特に、就職活動の初期に当たる面接・検討の時期に傾向が顕著で、特に2021年入社は今年に比べて「企業分析」が閲覧される時期が長いことを鑑みると、コロナによって企業や業界の業績が変化したことに不安を感じて情報を集めようとしたのではないかと推測しています。
そもそも学生は就職前から、入社後の「ギャップ」があることを先輩や世の中の情報から得て知っています。いわゆる「リアリティショック」というものですね。それがコロナ禍によってさらに大きくなることが懸念され、「企業分析」をしっかり行う姿勢として現れたのだと思います。
注
[1]: OpenWork 働きがい研究所調べ「新卒若手社員の入社後ギャップ」
[2]: OpenWork独自のアルゴリズムによって企業ごとに異なる賃金カーブを年齢別に可視化する年齢別年収機能や、職種別平均年収機能。