エントリー(採用)マネジメントがカギ
岡本勇一氏(以下、岡本) まず、御社では人的資本経営をどのように定義されていますか。
布川友也氏(以下、布川) 人的資本経営は、従業員および経営陣の知識、スキル、経験から得られるアウトプットをどう最大化するかを考える経営活動だと定義しています。
岡本 なるほど。そういった人的資本経営を理想としたときに、御社が組織として目指したい型はありますか。
布川 組織の型にはいくつかあります[1]。たとえばNetflixなどは「スター型組織」です。採用は能力のポテンシャルを見て行い、候補者はその会社が好きで入社するというより仕事が好きで入社します。シリコンバレーによくある「エンジニア型」の組織は、スキルを活かしてプログラムコードを書きたい、この言語を使って開発がしたいといった考えの人たちが集まる組織です。
当社が理想とし、目指しているのは「コミットメント型組織」です。この型の会社に入る理由は「文化が好き」、つまり働く人やバリューが好きだから。したがって採用基準は、その文化を体現できるかどうかになります。管理運営では、「この同僚と働きたい」「この文化の中で働きたい」といった、とにかく「文化」へのコミットメントが欠かせません。
注
[1]: 【参考】Coral Insights「スタートアップの組織設計図の5類型と、その失敗率」
岡本 コミットメント型組織を目指すにあたって、現在地とのギャップや課題をどのように捉えていますか。
布川 経済活動という極めて金銭的な行為に対して文化的な組織を作ること自体、本質的には矛盾している。これが理想と現実のギャップで、難しいポイントです。
一番の課題を挙げるとエントリーマネジメント、つまり採用ですね。当社はいわゆるスタートアップの急拡大フェーズにあり、昨年40名だった従業員数が、現在は100名に達しています。その間、「ログラスの文化にコミットできる」という人を見極めて採用してきました。さらに来年200名まで組織を拡大したいとすると、そのような狭い選考基準を持ちながら、100人規模で集めなければいけない。これは容易ではありません。
岡本 組織が急拡大するときにありがちなのは、エントリー段階では相性が良かったけれども、入社後に合わない部分が出てくるというケース。そういったことは起きていないですか。
布川 幸いなことに、今のところそうした問題は発生していません。エントリーマネジメントを厳しくしている分、入った後のオンボーディングがうまく進んでいます。実際、eNPSスコアは+65と非常に高い数値が出ています[2]。
注
[2]: 諸説あるが、日本企業のeNPSの平均は-40~-20程度という。