人的資本開示が進んでいる背景
Q1
なぜ人的資本情報の開示が必要なのですか?
企業価値の源泉が有形資産から無形資産、その中でもとくに人的資本に変わってきていることから、投資家保護を主な目的の1つとして、金融庁が2023年3月期決算よりすべての上場企業に対して人的資本の開示を義務付けているからです。
これは欧米の流れを受けており、アメリカでは2020年に米証券取引委員会(SEC)がすべての上場企業に人的資本に関する情報開示を義務付けています。
ただ、人的資本情報の開示における本質的な必要性は、企業が中長期的な企業価値向上を実現するために、ビジネスモデルや経営戦略を明確にして、それを実現するための人材戦略を策定し、その人材戦略の達成に向けたPDCAのサイクルを回していくことにあると考えています。
Q2
未上場企業(有価証券を発行していない企業)には影響はありませんか?
投資家に対する開示という側面では、未上場企業への影響は小さいです。しかし、人的資本情報の開示は、従業員エンゲージメントや採用市場への影響もあると考えられており、これらの領域では未上場企業への影響もあるといえます。
上場企業が人的資本情報の開示を行っていく中で、未上場企業でも情報開示しない企業は人材投資の意思がないと判断され、「従業員のエンゲージメントが下がる」「自社の魅力が伝えられない」といったことにより、採用や離職など人材の確保の面で影響が出る可能性があります。