暗黙知を言語化したバリュー・行動指針とそこに込めた想い
——御社では、まだメンバーが10名だった頃に(2023年7月現在は約120名)バリューと行動指針を策定したと伺いました。なぜそのタイミングだったのでしょうか。
最初に議論を始めたのが、事業を開始してから2年ほど経った2020年の6月頃です。我々のプロダクト「Monoxer」が徐々に世間から受け入れられるようになり、自分たちの事業に手応えを感じ始めたタイミングでした。今後、さらに成長を続けていくにあたっては、当然、新しいメンバーを迎えることになります。そうしたときに、組織で共通の言語や価値観となるバリューがあれば、メンバーが増えても皆が同じ方向に向かって全力投球できるのではないかと考えたのです。
当時10名ほどのメンバーでしたが、創業期から共に過ごしてきた仲間として、すでに共通の価値観らしきものが社内に存在していました。そのため、バリューを策定するにあたっては、無理やり案を捻りださなくても、これまで大事にしてきた共通の「暗黙知」を言語化すれば、バリューや行動指針ができるのではないかと確信していました。そこで、毎年開催している全社合宿の機会に、「みんなでバリューを話し合ってみないか」と持ち掛けたのです。
——組織としての一体感を高めるために、バリューや行動指針があったほうがいいと。
そうですね。モノグサの創業者である竹内(孝太朗CEO)と畔柳(圭佑CTO)、そして私も含め経営の経験は初めてだったので、創業当初から、グーグルやアマゾン、フェイスブック、リクルートといった成功している企業の経営を見て学んできました。すると、どの企業も経営理念やミッション、ビジョン、バリューを大事にしていることが分かったのです。加えて、前職のリクルートでは、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という創業者の言葉が組織内に深く浸透しているのを感じており、私自身もキャリアを考えるうえで自然と意識していました。そうした経験から、企業のバリューや行動指針が働くうえでいかに従業員に影響を与えるか、どれほど重要かを肌で感じていたのです。
——実際、どのようなステップでバリューが策定されていったのでしょう?
まずは、自分たちが大事にしているキーワードをホワイトボードに書き出すことから始めました。先ほど、「すでに共通の暗黙知がある」とお話ししましたが、それを言語化するにあたって自分たちに問いを投げかけていったんです。具体的には「モノグサらしさとは何か」「組織が3000人になっても失いたくないものとは何か」「これまでコンフリクトが起きた原因は?」「我々が考える“優秀さ”とは何か」と。そして、そこから出てきたキーワードをもとに、まずは9つの行動指針を決めました。その後、それぞれ3つのグループに分けて生まれたのが「人類への奉仕」「事業へのオーナーシップ」「プロフェッショナルリズムの体現」というバリューです。
そのうえで、我々が創業期から大切にしている“ものぐさ”というキーワードをもとに、「ものぐさで行こう」というバリューと「いつでもボードゲームを遊ぶ余裕を持つ」という行動指針を加えました。現在、4つのバリューと10個の行動指針を掲げて事業を行っています。