開催20年目を迎えた世界最大級の「人事とITに関する展示会」
「HR Tech最前線 テクノロジーで変わる人事の未来」をテーマに開かれた今回のセミナーは、第一部が伊藤氏による「HR Tech Conference & Expo」参加レポート。続く第2部では、HR Techサービス提供企業として、株式会社タレントクラウド、株式会社Meta Anchor、Fringe81株式会社が、それぞれ自社の提供するソリューションを紹介した。
伊藤氏が参加してきたHR Tech Conference & Expoは、今年で開催20年目を迎える世界最大級の「人事とITに関する展示会」だ。2017年は10月10日(火)~13日(金)の4日間にわたり、米国ラスベガスで行われた。
出展企業は14か国・425社におよび、そのうち約50社をスタートアップが占めている。また、スポンサー企業にはOracle、SAPを始めとするグローバル企業が名を連ね、日本からもワークスアプリケーションズが参加している。
会場では約80セッションが行われ、来場者数は約9000名。そのうち、日本からの参加者はおよそ90名とわずか1%に過ぎないが、伊藤氏は世界の人事テクノロジーの最前線をぜひこの目で見たいと、単身参加を決めたという。
「現在、年間2400億円のベンチャーキャピタルマネーがHRベンダーに流れているといわれています。前年比でいうと60%増ですが、このうち日本は1.4%足らずです。日本でHR Techに関心を持つ者として、ぜひこの熱気に触れたいという思いがありました」(伊藤氏)
HR Techの対象領域はより幅広く
そもそもHR Techとは何か。一般的には、人事部門で利用されるアプリケーションやAIソリューションなど、「人事に関するさまざまな業務を簡素化・効率化するためのITを活用した仕組みの総称」とされている。その対象領域も、人材採用からリーダーの育成、業績評価といった個別業務、日常の給与計算や勤務状況の管理など、人事に関するあらゆる業務を指す。
従来のHR Techはリクルーティングから検討、採用決定までのオペレーション業務を効率化することを主な目的にしていた。だが今後は、社内の人間関係をよりよくするための取り組みや、心身ともに健康な状態で働く支援を行うツールとしての役割が大きくなっていくという。
事実、HR Tech分野では、これまで採用業務とは関係のなかった大手のプレーヤーが、次々とATS(採用管理システム)や採用関連プロダクトに参入しつつある。2012年にOracleが人事管理クラウドの「Taleo」を買収したのを皮切りに、2017年にはGoogleが求人アプリ「HIRE」をリリース。また、以前から統合人事管理ツールを提供していた「Workday」も、リファラル採用にまで領域を広げている。こういった動きからも、人事採用に関するHR Techの需要は、まだまだ右肩上がりであることがわかる。
現在、HR Techはさらに多様化を進め、採用支援から個人のタレントマネジメント、ヘルスケア、Well-being(福利厚生を含め、心身共に“満足度”の高い状態)までを網羅するようになってきている。伊藤氏は、「これまではやはり採用関連の分野がメインであり、なおかつ“採用祭り”的な需要は続いています。しかし、もう少し視野を広げてみると、今一番ホットなのは“エンゲージメント”であり、この次に来るのは“Well-being”だと見ています」と語る。
リクルーティングで人材を募集し、選考や面接を重ねて採用に至るというプロセスはこれからも重要である。しかし現在は、入社した人材と企業・組織との間に信頼関係を築く「エンゲージメント」の重要性がどんどん増している。また、採用においても、日ごろから社員を通じて外部の人材候補とのつながりを構築しておく「リファラル」が、優れた人材を確保する施策として存在感を強めている。HR Techにはこれらを一気通貫で実現・解決できることが求められていると、伊藤氏は指摘する。