大規模開発だけを担うプロジェクトマネジメントのプロ集団とは
現在、約70名のプロジェクトマネージャーやSEを擁するプロジェクト推進部。大規模開発プロジェクトを専任する組織として、7年前に発足した。
石原氏「大規模開発はすごく難しいことなのに、1つのサービスに属していると、経験する機会は数年に一度、来るか来ないか。しかし、事業戦略でリニューアルが決まったら、日々サービスを保守・エンハンス(強化)する中で、突然100人体制のプロジェクトを立ち上げることになります。
当然ですが、日々の保守・エンハンス業務と大規模開発とでは、求められるスキルも手法も大きく違う。人材育成やマネジメントもうまくいきませんでした。そこで、プロジェクト推進部が作られたんです」
特定のサービスに属していると、リニューアルのタイミングはたまにしか来ないが、リクルートグループ全体で見ると、大規模開発のプロジェクトは各所で走っている。プロジェクト推進部ができたことにより、「グループ内で一定額以上の投資をする場合や、規模や人月などから見た“難易度”が一定以上の場合には、必ずプロジェクト推進部を通す」という会社規定が設けられた。
日々の保守・エンハンスの業務を担うのは、各サービスを担当するエンジニアだ。そこで気になるのが、大規模開発を行う際の指示系統である。
石原氏「大規模開発のプロジェクトについては、僕たちプロジェクト推進部がトップに立ち、各サービスの知見を持ったエンジニアを入れた最適な編成を組むようにしています。いわば、僕たちは傭兵部隊のようなもの。プロジェクトを渡り歩きながら、徹底的にプロジェクトマネジメントの専門性を高めているのです。このスタイルになった当初は反発もありましたが、今では互いの専門性に共通理解を持っているので、あまり問題は発生しなくなりましたね」
とはいえ、プロジェクト推進部が現在抱える案件は18個にも及ぶ。加えて、グループの成長によるサービスの増加と、EOSL(End of Service Life)対応の増加に伴い、難易度の高い改変が急激に増えている。これにより、5年前は1プロジェクトあたり平均1億円だったところから、今では平均7億円へと各案件の規模が急拡大している。
これほど大規模な案件になると、開発側とサービス側でコンフリクトが生じるのは必然だ。そのため、プロジェクト体制を決める際には、双方の経営陣を集めたステアリングコミッティで決議が行われるのだという。
石原氏「マネジメントラインを曖昧にすると、責任の所在がどっちつかずになってしまう。それを回避するために、プロジェクトに参加するメンバーは、必ず組織ごとプロジェクト側に異動してもらうなど、細かい規定を積み上げて調整しています」