会社によって異なる人事業務の割り振りを理解しよう
人事の業務は、大きく「人事」「労務」の2つに分けられますが、線引きの仕方はさまざまです。ここからは、人事の業務をバックオフィス部門の中で割り振るにはどのような方法があるのか、分類例を見て理解を深めていきましょう。
ケース① 人事・労務を1担当で行う場合
最初に、人事・労務の業務をまとめて担当する場合です。小規模な企業では、スポットでしか採用業務を行っていない場合もあるため、採用や入社者研修、入退社手続などは発生ベースで対応し、給与計算や勤怠管理をメインで行うイメージです。担当者も1人というケースが少なくありません。
ケース② 人事・労務の2担当に割り振る場合
人事・労務の各業務を2つの担当に割り振った場合は次のようになります。給与計算や社会保険手続きを人事と労務のどちらで行うかは会社によります。
ケース③ 採用・労務・経理の3担当に割り振る場合
人事の業務を、人事・労務だけでなく、経理も含めて3ポジションに割り振った例です。採用活動が活発な会社では、次図のように人事ではなく「採用」担当としてポジションを置く場合も多いです。
この分類方法では、労務と経理のどちらが勤怠管理や給与計算を行うのか、社会保険の計算や届出、税金の納付作業は誰が対応するのかがポイントです。上図は一例として、従業員の労働時間が規定のラインを超えないように健康管理する役割を労務に割り振り、勤怠実績から計算される各種税金のとりまとめや支払手続きは経理が行うパターンとなっています。
ケース④ 採用・労務・総務・経理に細かく割り振った場合
採用や労務、経理に加えて総務部を含めて人事の業務を割り振ったケースです。次図の例では、勤怠管理のみ労務に残して、給与計算や年末調整は経理に任せています。また、福利厚生関係の仕事を、総務の業務として割り振っているのも特徴です。
ケース⑤ 採用・バックオフィスの2担当に割り振る場合
最後に、人事の業務を採用とバックオフィスの2つに割り振る場合です。小規模なスタートアップ・ベンチャー企業で採用が急務の場合、労務担当よりも先に採用担当を置く会社が少なくありません。しかし、採用のコア業務以外はすべてバックオフィスとして1担当(多くは1人)が負うことになり、工数負担が大きくなって業務効率化が図れなくなるため、あまりお勧めできない割り振り方です。
今回のAさんは、前職では人事部の中の労務担当として社会保険手続き業務を行ってきましたが、ケース⑤の組織に入社したことで業務範囲がぐっと広まり、混乱してしまったようです。Aさんのように、人事業務の割り振り方が大きく異なる会社に移った場合は、次のようなアクションをとってみると、ご自身のキャリアにプラスになるのではないでしょうか。
アクション例
- 前職と業務の割り振り体制を比較し、メリット・デメリットを分析した上でベストな割り振り方法を提案していく(異なる組織体制を経験することで、業務改善を提案するスキルを伸ばす)
- 所属する組織ごとに、社内における労務の役割を丁寧に言語化し、上長とすり合わせる(職種ごとの役割を明確にして上長とすり合わせることで、評価基準の確立や、適性な業務分担の後押しになる)
また、採用・バックオフィスの2担当制をとっている企業の経営者は、採用時に自社の体制を丁寧に説明してミスマッチを防ぐよう心掛けましょう。