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HRzine Day(エイチアールジン・デイ)は、人が活き会社が成長する人事のWebマガジン「HRzine」が主催するイベントです。毎回、人事の重要課題を1つテーマに設定し、識者やエキスパードが持つ知見・経験を、参加者のみなさんと共有しています。

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HRzine Day 2024 Winter

2024年2月1日(木)12:00~17:40

主要製品スペック一覧

人事業務の効率・確度・精度を高めるために欠かせないHRテクノロジー。その主な製品の機能を分野ごとに比較できる資料群です。製品検討の参考資料としてご活用ください。

eラーニング・LMS<br>主要製品スペック一覧 2024

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主要製品スペック一覧 2024

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人事労務管理システム<br>主要製品スペック一覧 2023

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タレントマネジメントシステム<br>主要製品スペック一覧 2023

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労務の困りごと聞きます! | #1(AD)

労務の私、なぜ営業の補助まで!? なあなあで済まさないための本来業務の確認

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 皆さんは「バックオフィスの業務内容」と聞いたときに、どういった業務を思い浮かべますか? 人事労務の仕事を思い浮かべる人もいれば、総務や経理、営業事務など雑多とした仕事を想像する人もいるかもしれません。バックオフィスの業務範囲は非常に幅広く、かつ企業によって定義が大きく異なります。そのため、バックオフィス職に転職をする際などに、企業間のギャップに悩む方も多いのではないでしょうか。本連載では「労務」にまつわる困り事などを取り上げていきますが、今回はバックオフィスや労務の業務内容を整理してみます。

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バックオフィスのAさん

バックオフィスのAさん
社会人5年目、前職では人事部署で労務を担当。主に派遣スタッフの社会保険手続を行う。より幅広く労務の仕事に携わるため、バックオフィスとして100人規模のWebベンチャーに転職したばかり。

人材業界のBさん

人材業界のBさん
社会人10年目、新卒から人材業界で採用・業務コンサルタントとして働く。さまざまな業界のリサーチや職種・企業研究が好き。AさんとはSNSでよくコメントしあうネット友だち。

バックオフィスのAさん

Aさん

Bさん、ちょっと聞いてもらっていいですか。今月入社した転職先で、想定外に幅広い仕事がたくさん降ってきて困っているんです。

Bさん

人事労務からバックオフィス職に転職したんですよね? 幅広いというと、どんな感じに?

人材業界のBさん
バックオフィスのAさん

Aさん

労務がメインだと言われて入社したんですが、営業から資料の印刷を依頼されたり、請求書の作成や郵送をお願いされたり、社長アポの手配なんかも任されたりするんですよね。雑用ばかり振られてて、全然スキルアップしなさそうで……これって事務の仕事じゃないんですか?

Bさん

あ、それは雑用ではなくて、総務や営業事務の業務を任されてるってことじゃないですか。

人材業界のBさん
バックオフィスのAさん

Aさん

そうなんでしょうか。バックオフィス職として採用されたので仕方がないんですかね……。あと、給与計算や年末調整をやっている経理の人が、これは労務の仕事じゃないかと言っていました。そういう仕事の割り振り方もあるのかと驚いています。

Bさん

なんだか、転職先とAさんの間で業務範囲の認識にギャップがありそうですね。改めて労務の位置づけや業務内容について一緒に整理してみましょうか。今の会社で、Aさんがどのような役割を任されているのか、企業にとって労務はどういった職種ととらえられているか理解したほうが、今のお仕事とうまく向き合えるようになると思いますよ。

人材業界のBさん

労務はバックオフィスに含まれる職種で、人事職の一部である

 企業の業務は一般的に、フロントオフィス・ミドルオフィス・バックオフィスに分けられます。バックオフィスとは「経理、会計、総務、庶務、人事など、セールスや顧客対応などを行う営業部門やマーケティング部門などを後方支援する部署や業務のこと」と解説されています[1]。そのため、Aさんのように、想定外に対応範囲が広かったというケースもよくあります。

 一方、顧客と直接関わる営業や販売、カスタマーサポート、製造業などの開発や製造・生産といった部門をフロントオフィスと呼び分けています。

 また、バックオフィスの「バック」という単語イメージから、裏方のサポート業務であるコールセンターやカスタマーサポートなども含めてバックオフィスと呼ぶケースも見られます。転職時には、転職先でバックオフィス職がどのような役割に位置付けられているのか、確認することが大切です。

[1]: 大塚商会の「IT用語辞典」を参照。

人事職の全体像

 労務職は本来、バックオフィス部門の一つである人事に分類される職種です。厚生労働省の職業情報提供サイトをもとに人事の全体像を整理すると、次図のようになります。

[画像クリックで拡大表示]

 人事は人材の採用から退職まで一貫して関わる役割を持ちます。採用から退職までの間に、労働条件の決定や日々の勤怠管理や給与管理、人事制度の企画から運用、人材の能力開発まで、さまざまな業務が発生します。

労務の代表的な業務内容

 さらに人事部門の業務の中から、労務の代表的なものを8つ説明しましょう。

①勤怠管理

 始業・終業時間、時間外労働時間、休日・休暇、有給休暇の取得日数など、従業員の労働時間を正しく把握・管理する業務です。法定で決められている労働時間は原則として「1日8時間、週40時間」となりますが、所定労働時間の取り決めや変形労働時間制、フレックスタイム制などを導入している企業は、企業ごとに適切に勤怠管理を行う必要があります。

 時間外労働の多い従業員にアラートを出す、有給休暇の残日数が不足する従業員が欠勤になった際の対応など、トラブル時も専門的知識をもとに、適切な判断を行います。

②給与計算・社会保険手続き

 給与規定や勤怠状況、各種手当の取得状況をもとに、従業員の給与や賞与を計算する業務です。給与を算出する際は、労働者が加入する社会保険(厚生年金・健康保険・労働者災害補償保険・雇用保険・介護保険)をそれぞれ計算し、従業員ごとの給与から天引きし、必要に応じて国などに納付します。

 社会保険以外にも、所得税や住民税、民間の保険や積立金などの手続きも適宜行います。

③福利厚生

 福利厚生には、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」があります。法定福利厚生は、②で紹介した社会保険がメインです。法定外福利厚生としては、「慶弔・災害時の見舞金」「住居手当」「通勤交通費」「社員食堂」「リモートワーク手当」などがあり、会社が任意で導入するものです。

 また、会社の義務ではないものの、働きやすい職場を整えるため、ユニークな福利厚生制度を企画運営しているケースも多いです。

④労働安全衛生法関連

 労働安全衛生法とは、労働災害を防止したり、従業員の安全と健康を確保したりするための法律です。会社の規模や業種によって取り組む項目が異なりますが、健康診断やストレスチェックの実施は多くの会社で必要な事項です。

 その他にも、衛生管理者や安全管理者、産業医といったスタッフの配置を実施する場合もあります。

ポイント

 コロナ禍で在宅などリモートワークを導入する企業が増えていますが、リモートワーク中ももちろん労働安全衛生法の視点で、従業員の健康に配慮が必要です。例えば、リモートワーク中に仕事に適したデスク・椅子が用意できず、床に座って腰痛になった場合、労災とみなされるリスクもあります。

【参考記事】
SmartHRガイド「リモート時代の「あるある労働トラブル」を社労士・弁護士が斬る【行列のできるしごと相談所 vol.1レポート 前編】

⑤就業規則の作成・変更・各種届出

 従業員数が10名以上の会社では就業規則の作成が必須です[2]。就業規則には、労働時間や給与、従業員の健康に関する事項や懲罰規程など、会社と従業員間の大切なルールが記載されています。 初めて就業規則を作成する場合は、社会保険労務士や人事コンサルタントなどプロに依頼するのが一般的ですが、作成時のプロジェクトを労務が担うケースも多いです。

 また、就業規則は一度作成したら終了ではありません、社内ルールの変更時の対応、各種届出を、法令に沿って実施する必要があります。

⑥年末調整

 従業員の1年分の給与、税金を確定して精算する業務です。従業員に必要書類を配布し、記入内容や提出書類など手続の流れを説明し、期日までに収集して再計算、所得税の還付・追加徴収まで実施します。従業員数が多い会社や、従業員本人が年末調整を理解しきれていない場合、何度も説明し直すなどフォローが大変な業務です。

⑦労働紛争・労災トラブル・ハラスメントなどの対応

 会社と従業員間で、残業代の未払いやハラスメントなどの個別紛争が起きた場合や、労災が起きたときなどに対応する業務です。解雇や雇止め、社内いじめやハラスメントといった事象が起きたときの窓口として、従業員や経営陣、相談先などへ聞き取り調査を行うなど、難易度の高い業務です。

⑧社会保険労務士や税理士・人事関連の協力会社の窓口対応

 労務の役割は多岐にわたり、労働基準法をはじめとする各種法令を遵守しなくてはならないため、社会保険労務士や外部顧問などと協業する場合があります。協力会社と会社の間に立ち、情報連携を行う業務です。

[2]: 厚生労働省「モデル就業規則について

会社によって異なる人事業務の割り振りを理解しよう

 人事の業務は、大きく「人事」「労務」の2つに分けられますが、線引きの仕方はさまざまです。ここからは、人事の業務をバックオフィス部門の中で割り振るにはどのような方法があるのか、分類例を見て理解を深めていきましょう。

ケース① 人事・労務を1担当で行う場合

 最初に、人事・労務の業務をまとめて担当する場合です。小規模な企業では、スポットでしか採用業務を行っていない場合もあるため、採用や入社者研修、入退社手続などは発生ベースで対応し、給与計算や勤怠管理をメインで行うイメージです。担当者も1人というケースが少なくありません。

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ケース② 人事・労務の2担当に割り振る場合

 人事・労務の各業務を2つの担当に割り振った場合は次のようになります。給与計算や社会保険手続きを人事と労務のどちらで行うかは会社によります。

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ケース③ 採用・労務・経理の3担当に割り振る場合

 人事の業務を、人事・労務だけでなく、経理も含めて3ポジションに割り振った例です。採用活動が活発な会社では、次図のように人事ではなく「採用」担当としてポジションを置く場合も多いです。

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 この分類方法では、労務と経理のどちらが勤怠管理や給与計算を行うのか、社会保険の計算や届出、税金の納付作業は誰が対応するのかがポイントです。上図は一例として、従業員の労働時間が規定のラインを超えないように健康管理する役割を労務に割り振り、勤怠実績から計算される各種税金のとりまとめや支払手続きは経理が行うパターンとなっています。

ケース④ 採用・労務・総務・経理に細かく割り振った場合

 採用や労務、経理に加えて総務部を含めて人事の業務を割り振ったケースです。次図の例では、勤怠管理のみ労務に残して、給与計算や年末調整は経理に任せています。また、福利厚生関係の仕事を、総務の業務として割り振っているのも特徴です。

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ケース⑤ 採用・バックオフィスの2担当に割り振る場合

 最後に、人事の業務を採用とバックオフィスの2つに割り振る場合です。小規模なスタートアップ・ベンチャー企業で採用が急務の場合、労務担当よりも先に採用担当を置く会社が少なくありません。しかし、採用のコア業務以外はすべてバックオフィスとして1担当(多くは1人)が負うことになり、工数負担が大きくなって業務効率化が図れなくなるため、あまりお勧めできない割り振り方です。

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 今回のAさんは、前職では人事部の中の労務担当として社会保険手続き業務を行ってきましたが、ケース⑤の組織に入社したことで業務範囲がぐっと広まり、混乱してしまったようです。Aさんのように、人事業務の割り振り方が大きく異なる会社に移った場合は、次のようなアクションをとってみると、ご自身のキャリアにプラスになるのではないでしょうか。

アクション例
  • 前職と業務の割り振り体制を比較し、メリット・デメリットを分析した上でベストな割り振り方法を提案していく(異なる組織体制を経験することで、業務改善を提案するスキルを伸ばす)
  • 所属する組織ごとに、社内における労務の役割を丁寧に言語化し、上長とすり合わせる(職種ごとの役割を明確にして上長とすり合わせることで、評価基準の確立や、適性な業務分担の後押しになる)

 また、採用・バックオフィスの2担当制をとっている企業の経営者は、採用時に自社の体制を丁寧に説明してミスマッチを防ぐよう心掛けましょう。

労務の専門性を理解してもらい、業務を改善していきましょう

Bさん

労務の本来の業務内容や、人事業務の割り振りの仕方についてイメージできましたか?

人材業界のBさん
バックオフィスのAさん

Aさん

ありがとうございます! 前職は④の形に近くて、採用と労務、総務と経理が社内にいました。分業制で労務の業務をピンポイントで行っていた会社から、⑤の会社に転職したのでギャップが大きかったんですね!

Bさん

そうですね。バックオフィスと打ち出しながらも、ふたを開けたら労務や人事、経理など何でもお任せしますという求人募集は多いですからね。今回説明したように、労務は人事の中に位置付けられる職種で、バックオフィスは会社の非営利部門の総称です。バックオフィスの求人に応募するときは、具体的にどのような業務を行うのか、突っ込んで聞いておくと安心ですよね。ただ、経営者や人事の中には、労務の役割や業務内容を十分に理解しきれていない人も多いんです。

人材業界のBさん
バックオフィスのAさん

Aさん

分かりました。せっかくの機会なので今は労務以外の業務も幅広くチャレンジしつつ、前向きに頑張ってみます。その他に、今後気を付けたほうがいいことはありますか?

Bさん

Aさんの労務のお仕事は、誰でもできる事務仕事ではなくて、非常に専門性が高い業務なんです。労働法や関係法令を遵守しながら従業員を守り、経営基盤を支える最重要ポジションだと私は思っていますよ。

今は組織の構造上、バックオフィスとして労務以外の業務も担当していると思いますが、労務の重要性を社内でしっかり伝えて、部署の配置を変えていくのもいいかもしれませんね。ただし、総務や経理、営業事務などそれぞれの適任を採用するには費用も時間もかかります。例えば、Aさんが使いやすいクラウド人事労務ソフトなどのシステムを活用するなど、今の組織にあった形で提案していけるとよいと思います。

労務やバックオフィスとして働く本人だけでなく、経営者をはじめ働くすべての人々が、職種理解を深めて正しく評価し合えるよう、知識を身に付けていけたら素敵ですね。一緒にまた学んでいきましょう。

人材業界のBさん

*     *     *

 今回はAさんの転職先での話をきっかけに、人事労務やバックオフィスの役割についてお伝えしました。本連載では引き続き、人事労務にまつわるお悩みや相談事を取り上げ、皆さんの仕事に役立つ情報を提供していきます。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://hrzine.jp/article/detail/3557 2023/12/11 18:21

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