人材白書2017年版では、サブタイトルを「デジタル大変革時代本番へ~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~」とし、次の3点をポイントとして挙げている。
- デジタルトランスフォメーション時代のIT人材
- 日本と米国の情報処理・通信に携わる人材の動向
- IT人材の不足の現状と意識の変化
なお、この白書の調査は、IT企業、ユーザー企業(IT企業を除く上場企業)、ネットサービス実施企業、IT業務に従事するIT人材個人に対して行われた。
1. デジタルトランスフォメーション時代のIT人材
1.の「デジタルトランスフォメーション」とは、IoTやビッグデータ活用、AI(人工知能)などのデジタル化が進むと、経済活動だけでなく、個人の生活や社会構造まで影響がおよぶが、その影響による変化を指す。
人材白書2017年版では、この変化がすでに始まっていると述べている。その根拠として、「この変化に対してどのように捉えているか」というアンケート調査において、ネットサービス実施企業の約40%、IT企業の約24%、ユーザー企業の約16%が、「すでに変化の中にいる」と答えていることを挙げている。「変化は今後起こる」「変化は至近に迫っている」を含めると、すべての企業において5割を超えることから、どの企業においても変化に対する認識があるといえよう。
また、「変化には誰が主導して対応していくべきだと思うか」という質問には、「すでに変化の中にいる」企業では、他の認識の企業に加えて、「経営者」が主導していくべきだという解答の割合が多いことから、変化への対応が経営者にまず求められるということがわかる。
その一方で、インタビュー調査においては、デジタル化を進めるにあたり全体方針を示す経営者に加え、具体的な推進を行う人材がデジタルトランスフォメーションの鍵を握るリーダー的人材が不可欠という声が上がっている。リーダー的人材には「他人を巻き込む力」、また、「ビジネスの知見」と「デジタルの知見」といったスキルをあわせ持つことが必要であり、これらのスキルの重要性を説いている。
2. 日本と米国の情報処理・通信に携わる人材の動向
2.は米国と日本と米国の情報処理・通信に関する調査を比較したもの。中でも米国の「情報セキュリティ技術者動向調査」には、組織におけるセキュリティ技術者に求められる必要なスキルや経験は、学歴や資格を重視する傾向があり、CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)には、経験を重視する傾向が見られるという調査結果が出ており、日本でも参考となる内容が含まれている。
3. IT人材の不足の現状と意識の変化
3.は、デジタルトランスフォメーションを推し進めるにあたり、課題となるIT人材不足の現状と、IT人材の意識の変化を追ったもの。
IT企業におけるIT人材の“量”に対する過不足感は、過去10年の調査を見ると、リーマンショック以来高まり続けていたIT人材の“量”に対する不足感の高まりはやや緩和していることがわかる。“量”がひと段落したことで、今後は“質”に関して問われることになると思われる。
一方で、ユーザー企業においては、IT人材の“量”に対する過不足の変化を過去9年間見てみると、「大幅に不足している」「やや不足している」と回答した割合が増加していることから、今年度も引き続き不足感が増す傾向にあるだろう。
ユーザー企業では人材不足解消が急務とされる中で、所属しているIT人材の意識に変化が参考になりそうだ。仕事内容に対する考え方を問うた回答を2011年と2016年で比較した場合、「この仕事をしていることに誇りを持っている」では「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の割合が増加している。
その一方で「新しい部署や企画を立ち上げる仕事をしたい」「新しい顧客を開拓・獲得する仕事をしたい」の「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の割合がどちらも2011年より2016年の方が低下している。
この傾向は、ユーザー企業だけでなく、人材の“量”の過不足問題がひと段落したといわれるIT企業のIT技術者にも同様にある。人材不足の解消には、現状のIT人材の意識変化も踏まえたうえで施策を打ち出す必要があるといえそうだ。