成果を前提に「会社と個人のWin-Win」を担保
上原達也氏(以下、上原) 「働きやすさ」や「働きがい」は、人によって捉え方がまったく違ってきます。職場づくりにおいて、貴社は何を大事にされていますか。
松井しのぶ氏(以下、松井) 働きやすさか働きがいかでいえば、後者を重視している企業だと思います。自由な働き方ができる代わりに、結果はシビアに見られる環境です。その前提で、私が意識しているのは、機会は平等にあるということ。しかも、中期的な観点で会社と個人のWin-Winの状態が担保されていることが大事だと思っています。

上原 個人としては仕事に思い切り打ち込みたいけれど、家庭環境などの理由で制限される場合、仕事と家庭のどちらかを諦めるしかないという環境の企業も少なくありません。しかし、ユーザベースはそうではない。もちろん、その働き方が会社の業績向上につながることが大前提ということですね。
松井 たとえば、「子供が熱を出した」「今月の目標を達成できなかった」のような、超短期的な事情は、お互い様の精神で助け合えばよいと思います。ただ、その状況が1~2年も続くと、チーム内に「どうしてあの人だけが優遇されるのか」「目標を達成しなくてよいのか」という気持ちが生まれてしまいます。もし、給与が同じだとしたらアンフェアだと感じる人もいるでしょう。ただ、時短制度によって給与がその分減っているなど、差し出すものと得るものがイコールであれば、それはそれでWin-Winな状態だと思います。
上原 その厳しさがあるから、社員もフェアに働けるのでしょう。今のお話を聞いて、貴社では挑戦したい人が何かを諦めなくてもよい環境にあるのを理解しました。
松井 本人が挑戦したいときには、その挑戦を後押しできる仕組みを整えておくこと。 会社と本人がWin-Winな状態を保ちながらペースダウンできること。いずれも大事なことです。そうした機会をフェアに提供できる状態を目指しています。
パフォーマンスを最大化する働き方をチームに委ねる
上原 自由と責任のバランスを高度に保っているのですね。では、会社として個人の自由をどのように担保されているのですか。たとえば最近では、リモートワークから一転して、一律に出社を促す企業が増えています。

松井 弊社は、コロナ禍以前から責任を果たしさえすればオフィスに来なくてもよいという制度でした。ただ、リモートワークをする人はそこまで多くなく、コロナ禍前の出社率は8割近くありました。それが、コロナ禍で出社ができなくなりました。
そうした状態になって、生産性が低下し、業績が伸び悩んでしまった時期がありました。コロナ渦が落ち着き、折しも、GAFAMが出社を強制したというニュースもあり、弊社でも社員に出社を奨励するべきではないかという議論になりました。結果としては、どういう働き方をすればチームのパフォーマンスを上げられるかを各チームで考えることになりました。
結局、会社が求めているのはパフォーマンスを最大化することです。それができるのであれば、働き方は自律的に決めてよいと思っています。ただ、成果を出すべきは個人のパフォーマンスではなく、チームのパフォーマンスだと明確化しました。それにのっとって、各チームで働き方を決めてもらっています。