採用広報に取り組む多くの企業で、共通の壁に突き当たることがあります。それは「広報担当や人事担当だけが孤軍奮闘し、現場との温度差が開いてしまう」という事態です。企業の公式アカウントが発信するメッセージは、安心感こそ与えますが、求職者が本当に知りたいのはその先にある「手触り感のあるリアル」——どんな人が隣の席で働いているのか。トラブルが起きたとき、どんな空気で話し合っているのか。日々、どんな葛藤を抱えながら仕事に向き合っているのか——です。候補者は「ロゴ」ではなく「人」を信じます。現場で働く社員1人ひとりの言葉や姿からこそ、企業の真実味(オーセンティシティ)が伝わるのです。だからこそ、採用広報は一部の担当者による“業務”を卒業し、「全社員で取り組む“組織文化”」へ広げていく必要があります。本稿では、全社員による採用広報を実現するための具体的な仕組みづくりとマインドセットを整理します。
社員を巻き込む採用広報の仕組みづくり
採用広報は「お願い」ではなく「構造」で回す
社員を巻き込もうとするとき、多くの企業が最初にやるのが「SNS投稿をお願いする」「インタビューに協力してもらう」といった依頼ベースのアプローチです。しかし、善意に頼った「お願い」は長続きしません。最初は盛り上がっても、時間が経つにつれて一部の人だけががんばる状態になり、やがて活動は止まってしまいます。
重要なのは、「お願い」で回すのではなく、参加したくなる構造をつくることです。採用広報を組織の活動として位置付けることで、自然と社員が関わる状態をつくることができます。
巻き込みは「経営 → 管理職 → 現場」の順で広げる
全社員採用広報を実現するためには、次の3段階でのステップが欠かせません。
1経営層:旗を掲げ、発信に「意味」を与える
経営者が「採用は会社の未来をつくる経営活動そのものであり、人事だけの仕事ではない」というメッセージを発信します。これによって、社員の中に「採用は自分たちにも関係のあることだ」という認識が生まれます。経営者自らが現場の活躍をSNSで称賛したり、自身の言葉で組織の現在地を語ったりする姿勢が、「発信してもよいのだ」と社員の背中を押してくれます。
2管理職:心理的安全性と「余白」をつくる
現場のマネージャーは、社員が採用広報に関わるための心理的安全性をつくる役割を担います。SNSでの発信やインタビューへの協力を歓迎する雰囲気をつくること、仕事のエピソードを共有することを後押しすることなど、管理職の姿勢によって現場の温度は大きく変わります。
3現場社員:日常の「可視化」を担う
現場社員に求めるのは、特別なキラキラした広報コンテンツではありません。日々の仕事で得た学び、チームの小さな成功、あるいは失敗から得た教訓を自然に発信することです。採用広報とは、魅力を「つくる」活動ではなく、そこにある日常を「見える化」する活動だと再定義しましょう。
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小澤 美佳(コザワ ミカ)
2008年に株式会社リクルートに入社。中途・新卒採用領域の営業・マネージャーを経て、リクナビ副編集長として全国の大学でキャリア・就職支援の講演を多数実施。大手からベンチャーまで幅広い企業のHR支援に携わり、採用・定着・育成・インナーブランディングなどに精通。2019年にITベンチャーへ転職し、広報部署を立ち上げ、メディア露出やSNS活用を通じて採用強化に貢献。2023年、兼業で株式会社令和PRを設立し、経営戦略に寄り添うPR...
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