弥生株式会社が、創業以来初となるCHRO職を2024年に新設した。その重責を担うのは、営業からキャリアをスタートし、外資系企業やLINE、LINEヤフーでHRBP組織の立ち上げを牽引してきた大野道子氏である。弥生が求めていたのは、管理型の人事ではなく、事業と人・組織・カルチャーを同期させる戦略人事だ。なぜいま、弥生はCHROを必要としたのか。大野氏が捉えるHRBPの本質と、新体制のもとで進む人事変革の現在地を聞いた。
弥生がいま、なぜ元LINEヤフーHRBP本部長をCHROに求めたのか
——大野さんは2024年9月に弥生に入社され、CHROに就任されました。そもそも、弥生はなぜCHROを求めていたのでしょうか。
弥生では、2022年にKKR(世界有数のPEファンド)の傘下に入って以降、成長を加速させるための変革が始まり、事業戦略も整いつつありました。ただ、3年後、5年後を見据えた中期的な事業プランを描けたとしても、それだけでは限界があります。入社前のことなので憶測もあるのですが、持続的な組織の成長や企業価値の向上には、事業の成長を後押しする人事戦略や、カルチャーを変えていくような変革も必要だと考えていたのだと思います。
そうした中で、これからの弥生には、管理型の人事というよりも「事業に伴走しながら動けるHRBPのような人材がフィットする」という判断があったのでしょう。私自身、前職ではHRビジネスパートナー本部の本部長を務めていましたので、そうした背景から「CHROとしてそこを担ってほしい」とオファーをいただいたのがきっかけでした。
大野 道子(おおの みちこ)氏
弥生株式会社 執行役員 CHRO 人事本部長
新卒で不動産業界に入り営業職からキャリアをスタートし、人事に転身。採用、人材開発から人事全般領域を担当し、人事部立ち上げまでを経験。その後、製薬会社のHRBPとして営業組織を担う。2019年にLINE株式会社に入社、EC、フィンテック、AI領域を担当し、HR Business Partner室長に就任。2023年会社統合により、LINEヤフー株式会社HRビジネスパートナー本部の本部長に就任。2024年弥生株式会社入社、執行役員 CHROに就任。
——大野さんご自身は、なぜ弥生でチャレンジしようと思われたのですか。
1つは、人事が管理部門から戦略人事へと変わっていくフェーズにあったことです。当時の役員の方々ともお話しする中で、弥生はいま、人事のあり方そのものを変えていこうとしている。その変化の大きさに可能性を感じました。経営の立場で事業を見ながら、人や組織、カルチャーを同期させていく。強い組織でなければ、事業もおぼつかないと思っていますし、そこに自分が関われることに大きな意義を感じました。
もう1つは、規模感です。当時の弥生はおよそ1000人。キーマンの顔がある程度見えて、何か施策を打ったときに、その反応を自分の肌感としてつかめる規模でした。一般的に、規模が大きくなるほど、人や事業を深く理解するのは難しくなります。その結果、階層が増え、担当も分かれていく一方で、現場の肌感がつかみにくくなる。どうしても活字や報告ベースでしか見えない部分が増えていきます。その点、弥生はリアリティを持って組織を見ながら動ける魅力がありました。
人や組織から事業に貢献するHRBPは「天職」
——大野さんはHRBPを長く経験されています。HRBPとしてのキャリアはどのように始まったのでしょうか。
私のHRBPとしてのキャリアは、12年前に外資系企業でそのポジションに就いたことから始まりました。HRBPは、ある程度の実務経験が求められる役割ですが、当時の上司から「あなたに向いているのでは」と背中を押されたのがきっかけです。人や組織、カルチャーという側面から事業に貢献していける感覚が自分にはとても合っていて、「これは天職かもしれない」と感じたのを覚えています。
ただ、日本では今でも「HRBPって何ですか」という状態が少なくないと思います。実際、LINEに入社した当時も、社内ではまだ「HRBPとは何か」からのスタートでした。一方で、LINEにはHRBPを必要とする背景がありました。サービスが次々に立ち上がれば組織も立ち上がり、サービスがクローズすれば組織もクローズする。そうした環境では、ビジネスの状況を踏まえながら人材の最適配置を考え、それを非常に速いスピードで進めなければなりません。
本社人事の立場から全体を見ているだけでは、現場で何が起きているのかを拾いきれないんです。組織の状態が分かっていなければ、現場の課題を聞いても「そうなのか」で終わってしまう。さらに、変化の激しい組織に対応できるよう、人事的手続きや組織づくりに関する制度の柔軟性は高かったものの、それ故に運用の難易度も高いという側面がありました。
だからこそ、「今は採用を優先すべきなのか」「退職を抑えるべきなのか」といったことをパートナーとして組織長と議論し、実行までリードできる人事が必要でした。
——なぜ従来の人事部門では課題感に向き合いきれないのでしょうか。HRBPとの違いを教えてください。
一般的に、人事部長や機能別の人事は、勤怠管理や評価プロセス、制度設計、労務といった専門領域を全体最適で見ていく役割が大きいと思います。一方で、HRBPが向き合うのは、事業の状況を踏まえた課題です。
人や組織、文化に関わる課題を見つけ、どう解決していくかを考える。必要であれば、人事の領域を超えてでも組織課題に取り組む。そうした意味では、コンサルタントに近い部分もあると思います。事業のパートナーとして伴走しながら、課題解決を前に進めていくのがHRBPの役割だと考えています。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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山田 優子(ヤマダ ユウコ)
神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。
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