これまで3回にわたり、オンボーディングについて扱ってきました。第15回ではオンボーディングの重要性、第16回ではSkill、Process、Culture、Networkという4つの視点によるオンボーディングの分解、第17回ではそれらをデータで継続的に捉える方法について紹介しました。ここまでは主に「新入社員」を想定して説明してきましたが、オンボーディングが必要なのは新しく入社する人だけではありません。オンボーディングを「新しい環境に適応し、そこで成果を発揮できるようになるまでのプロセス」と考えると、その対象はもっと広がります。今回は、新入社員以外にもオンボーディングの対象を広げ、環境や役割が変化した人の状態をデータでどのように捉えればよいのかを考えていきます。
オンボーディングが必要なのは新入社員だけではない
勤続10年の井上さんが、初めて営業部長になったとします。井上さんは、会社のことも営業の仕事もよく知っています。しかし、「部長」という役割についてはまだ1ヵ月目。求められる役割や仕事の進め方、周囲との関わり方は大きく変化しています。
一方、勤続8年の小田さんは、安定した成果を出している既存事業から、新規事業を担う部署へ異動しました。社歴としては十分にベテランですが、新しい環境ではまだ3ヵ月目。0から1を生み出すような環境で働くのも今回が初めてです。
この2人に共通するのは、「最近、仕事における環境や役割に大きな変化があった」ということです。会社での経験が長くても、環境や役割が変われば、新たに適応しなければならないことが生じます。
入社は、環境や役割が大きく変化するイベントの1つです。しかし入社以外にも、環境や役割が変化したタイミングではオンボーディングが欠かせません。
では、新入社員と、異動や昇進などを経験した社員では、オンボーディングにどのような違いがあるのでしょうか。
変化によってオンボーディング負荷は異なる
新入社員のオンボーティングと違うのは、すべての変化に同じオンボーディングが必要になるわけではない点です。本連載第16回で紹介したSkill・Process・Culture・Networkの4つの視点で考えると、どのような変化を経験したかによって、適応が必要になる領域が異なります。
たとえば、社内で部署を異動する場合は、これまでのSkillや会社のCultureについての理解を活かせる一方、具体的な仕事の進め方や周囲の人間関係が変わるため、ProcessやNetworkへの適応負荷が大きくなると考えられます。
同様に、職種転換ではSkillやProcess、管理職への就任ではSkill、Process、Networkなど、変化によって負荷のかかり方は異なります。整理すると、次のように考えることができます。
| 環境や役割の変化 | Skill | Process | Culture | Network |
|---|---|---|---|---|
| 部署異動 | △ | ◯ | △ | ◯ |
| 職種転換 | ◎ | ◎ | △ | ◯ |
| 昇進・新任管理職 | ◎ | ◎ | △ | ◎ |
※◎は適応負荷が大きい、◯は中程度、△は比較的小さいことを示す。いずれも典型的な傾向を模式的に示したもので、実際の負荷は本人の経験や異動・役割変更の内容によって異なる。
オンボーディングの負荷は単純に「大きい/小さい」だけで捉えるべきものではありません。どのような変化によって、Skill・Process・Culture・Networkのどこに適応負荷が生じているのかを捉えることが重要です。
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友部 博教(トモベ ヒロノリ)
東京大学大学院で博士号を取得後、東大、名古屋大、産総研などでコンピューターサイエンスの学術研究に取り組む。2011年、DeNAに入社し、アプリゲーム分析およびマーケティング分析などの部署を統括、その後ピープルアナリティクス施策を担当。メルカリの人事を経て、ビズリーチに入社。現在はビズリーチ WorkTech研究所 ...
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