前回は、オンボーディングを「Skill」「Process」「Culture」「Network」という4つの視点に分解し、新入社員や異動者の「立ち上がりが遅い」という状況の背景には、さまざまな要因があることを紹介しました。では、実際にオンボーディングの状況を把握するために、どのような指標を計測すればよいのでしょうか。オンボーディングに関するデータとして、入社後のサーベイや研修受講状況などを収集している組織も少なくありません。しかし、ある時点の結果だけを見ても、オンボーディングの進捗を確認することは困難です。そこで今回は、前回紹介した4つの視点をもとに、オンボーディングでどのようなデータを可視化し、その変化をどのように捉えるかについて考えていきます。
オンボーディングは「点」ではなく「線」で見る
オンボーディングに限った話ではありませんが、人や組織の状態を把握するとき、まず重要なのは、ある時点の状態だけで判断しないことです。
特にサーベイでは「絶対値」だけでなく「変化」が重要です。たとえば、入社3ヵ月後のサーベイで「社内に相談できる相手がいるか」といった設問に対し、新入社員が5段階中の「3」で回答していたとします。この「3」という数字だけで、オンボーディングが順調である、もしくは何らかの懸念がある、と判断することができるでしょうか。
入社1ヵ月後のサーベイで「1」と答えていたのであれば、「3」に変化したということは社内のネットワークが着実に形成されているのでは、と考えられます。一方で、入社1ヵ月後は「5」だったにもかかわらず、「3」に変化したということであれば、何らかのネガティブな変化が起きている可能性があります。
そのため、オンボーディングでは「現在どのような状態にあるか」だけでなく、「これまでどのように変化してきたか」を見る必要があります。たとえば、入社1ヵ月、入社3ヵ月、入社6ヵ月と同じ指標を継続的に計測しておけば、新入社員が新しい環境へ適応していく様子を把握できます。
オンボーディングを「点」ではなく「線」として捉えることが、継続的なモニタリングのスタート地点となります。
4つの視点をどんなデータで捉えるか
では、オンボーディングにおいては、どのようなデータを継続的にモニタリングすればよいでしょうか。前回紹介した「Skill」「Process」「Culture」「Network」の4つの視点について、利用できるデータや指標を次表に整理しました。
| 視点 | 捉えたい状態 | 主なデータ・指標の例 |
|---|---|---|
| Skill | 仕事に必要な知識やスキルを身に付けているか | 本人・上長による習熟度評価、研修受講状況、テスト・認定試験結果、スキル評価 |
| Process | 仕事の進め方を理解し、自律的に業務を遂行できているか | 本人・上長による業務習熟度、遂行できる業務の範囲、レビュー・差し戻し状況、業務システム上のプロセスデータ |
| Culture | 組織の価値観や暗黙のルールを理解し、新しい環境に適応できているか | パルスサーベイ、価値観への理解・共感、チームへの馴染み度合い、定性評価 |
| Network | 仕事に必要な人間関係や、困ったときに頼れる関係を構築できているか |
相談相手の有無、1on1・メンター面談の回数、コミュニケーションデータ、ONA[1] |
注
[1]: 組織ネットワーク分析(Organizational Network Analysis)。
ここで注目すべきは、オンボーディングを可視化するために、全く新しいデータを取りに行かなければならないわけではない、ということです。場合によっては、人事データや研修履歴、実際の業務データなど、すでに組織内に存在しているデータも活用できます。
また、1つの指標だけで状態を判断することは困難であるため、複数のデータを組み合わせて見ることが重要です。たとえばNetworkであれば、「相談相手がいるか」を問うサーベイだけでなく、1on1やメンターとの面談状況、コミュニケーションデータを組み合わせることで、社内での人間関係の形成がどのように進んでいるかを、より多面的に捉えることができます。
これに加え、もう1つ大事な観点は、誰の視点からオンボーディングの状態を捉えるのか、というものです。
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- この記事の著者
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友部 博教(トモベ ヒロノリ)
東京大学大学院で博士号を取得後、東大、名古屋大、産総研などでコンピューターサイエンスの学術研究に取り組む。2011年、DeNAに入社し、アプリゲーム分析およびマーケティング分析などの部署を統括、その後ピープルアナリティクス施策を担当。メルカリの人事を経て、ビズリーチに入社。現在はビズリーチ WorkTech研究所 ...
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