「人は減る、でも物流は止められない」 “人が増えない前提”で変革に挑むギオンの人事DX
人材不足や労働環境の変化が社会問題にもなっている物流業界において、企業はいかにして人事領域のDXを推進し、組織を変革していくべきだろうか。株式会社SmartHRは、「物流人事DXが導く2030年へのロードマップ 〜今、管理部門が取り組むべきこと〜」をテーマにセミナーを開催。本セッションには、1965年の創業以来、全国に約100拠点を構え、約4000人の従業員と約1500台の車両を保有する総合物流企業の株式会社ギオンから、上席執行役員 管理本部長の須藤亮平氏と同社 管理本部 人事部 部長の渋谷千尋氏が登壇した。本稿では、物流業界の人事課題におけるデータ経営の必要性と、現場を巻き込んだタレントマネジメントの実践的な取り組みについて、両者の議論をレポートする。
人は減る、でも物流は止められない——矛盾が進む物流業界
まずセッションの前半では、物流業界を取り巻く環境と今後の展望について須藤氏が解説した。須藤氏は、現在の物流業界が直面している状況について、一時的な人手不足という言葉で片付けられるものではなく、物流という供給能力が社会全体で不足する「構造転換」に入ったと指摘する。
日本の生産年齢人口は減少の一途をたどるうえに、物流業界を支えるドライバーは40代以上が全体の約76%を占めており、今後彼らの大量退職が見込まれている。さらに、時間外労働の上限規制やEC拡大による小口配送の増加などが重なり、2030年には需要に対して供給が約35%不足するという深刻な予測がなされている。
「これまでの物流会社の成長モデルは、仕事を取り、車両を増やし、人を採用して売上を伸ばすというシンプルなものでした。しかし、これからは人が増えないという現実に向き合わなければなりません」(須藤氏)
この変化に伴い、物流企業の競争軸は単なる輸送力の確保から生産性の向上へ、そして売上の向上から付加価値の創造へと大きくシフトしていく必要があると須藤氏は指摘する。実際に、近年では輸送や保管だけでなく、荷主に代わって物流システムの提案や運用を含めた包括的な物流業務を行うサードパーティー・ロジスティクス(3PL)に注力する企業が増加しており、ギオンもそのうちの1社だ。
須藤 亮平(すどう りょうへい)氏
株式会社ギオン 上席執行役員管理本部長
2006年に新卒入社。総務課に配属され、広報を中心に指定管理事業の立ち上げや、グループ会社のフィットネス事業の運営などに携わる。その後、新規部署の企画課にて新卒・中途を中心に採用の強化をおこない、2020年より人事部の統括。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やエンゲージメント向上の施策をはじめ、人事労務のDX化を牽引。2025年より現職。
須藤氏は2030年に向けて、「労働人口の減少」「外国人材の本格活用」「AI・自動化技術の普及」「サプライチェーン全体のデータ連携」「物流効率化法による構造改革」といった大きな変化が同時多発的に発生すると予測する。
「外国人労働者が増えれば教育の方法を変えないといけませんし、自動化設備の導入を進めれば管理職の仕事が変わっていきます。つまり、人材の多様化とテクノロジーの高度化が進み、経営そのものが変わっていく。ここが物流業界の2030年を考えるうえで非常に重要だと考えています」(須藤氏)
経営が変わると、管理部門の役割も変わっていく。従来の経験や勘に基づく現場の「管理」から、データに基づく意思決定や多様な人材の育成を伴う「改善」へと大きく変わらざるを得ないだろうと須藤氏は解説した。
「ここまでの話をまとめると、『人は減る、でも物流は止められない』という矛盾を物流業界は抱えているのです」(須藤氏)
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井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)
1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。
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