近年、これまで新卒採用一辺倒だった日本の大手企業が、キャリア採用を急激に増やしている。しかし、一定のスキル・経験を持ち、年功序列から外れているキャリア入社者の受け入れに困惑する現場は多いようだ。受け入れに失敗し、せっかく採用できた人材を早期退職させてしまうケースも少なくない。この課題を解決するため、株式会社ビズリーチはオンボーディング支援サービス「Onboard AI」を提供開始するとともに、その基盤となるフレームワーク「ACEモデル」を発表した。本稿では、同社の茂野明彦氏と立教大学准教授の田中聡氏という、ACEモデルを開発した両名が対談。オンボーディングにまつわる課題とその解決方法、ACEモデルが誕生した背景や同モデルの意義などについて語り合った。
キャリア入社者は即戦力という神話
茂野明彦氏(以下、茂野) キャリア採用が増えているトレンドは、皆様も肌感覚としてお持ちではないでしょうか。今や新卒採用よりキャリア採用が上回る企業も増えています。
田中聡氏(以下、田中) メガバンクでその年のキャリア採用が新卒採用を上回ったことが話題になりましたが、「新卒で入社する以外の道はほとんどない」といわれていたような企業でキャリア採用の比率が高まるという出来事は、各社のキャリア採用を一気に加速させました。
田中 聡(たなか さとし)氏
立教大学 経営学部経営学科 准教授
博士(学際情報学)東京大学
「人とチームのブレイクスルーを科学する」をテーマに、“人・チーム”にまつわるさまざまな社会的(実務的)課題に対して、人材マネジメント論(人的資源管理論)・組織行動論の立場から実証的な研究に取り組んでいる。主な研究テーマは、(次世代)経営人材の育成、新規事業部門の人材開発・組織開発、若手社員の組織適応と経験学習、ミドルマネージャーの発達、ミドル・シニア人材の人材開発・キャリア開発、人事パーソンの学びとキャリア、など多岐にわたる。
茂野 ただそうなったとき、浮上してくる課題がオンボーディングです。キャリア入社の方には、キャリア観やカルチャー、社内で働くために必要な情報にギャップがあるため、そこを埋めていかなければなりません。それがオンボーディングであるわけですが、難しいのがオンボーディングは日常業務と並行して行わなければならない点です。
さらに、キャリア入社の場合、入社時期が4月に限定されているわけではなく、毎月のように人が入ってきます。そうなると、オンボーディングが行き届かないこともあるでしょう。それが原因で、早期離職されてしまうケースが増えている。これは弊社のアンケートでも判明していますし、現場でそう感じている方もいらっしゃると思います。
田中 ただ、キャリア入社した人の離職自体は以前から一定数あったはずです。それがなぜ今、経営課題化しているのかというと、やはり人手不足が原因です。「辞めたらまた採用すればいい」というサイクルが回らない。離職されたら代わりがいない。だからこそ、「入社したこの人を何とか活躍させ、定着させなければならない」という方向に、会社全体の意識がより強く向いていったのだと感じます。
茂野 そのとおりですね。早期離職になると採用・育成にかけたコストが全く無駄になってしまいます。さらに最近は、企業のレピュテーション(評判)リスクを気にされる企業が非常に増えています。オンボーディングに失敗すると「支援がない」「すぐに離職した」といった評判が広がり、採用自体がさらに難しくなってしまう。成果、コスト、そしてレピュテーションリスクを考えると、オンボーディングが経営アジェンダに入り始めたのは必然です。
茂野 明彦(しげの あきひこ)氏
株式会社ビズリーチ Onboard AI 事業責任者
2012年、株式会社セールスフォース・ドットコム(現:株式会社セールスフォース・ジャパン)に⼊社し、グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部⾨を⽴ち上げる。2016年、株式会社ビズリーチ⼊社。インサイドセールス部⾨の⽴ち上げのほか、ビジネスマーケティング部部⻑、HRMOS事業のインサイドセールス部部長を歴任。現在は、新規事業の責任者として、プロジェクトを推進。著書に『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』(翔泳社)。
田中 ここは議論の余地がないですね。一方、「キャリア入社の人にはオンボーディングは必要ない」という、何となくの「即戦力神話」が未だに根強く残っています。「経験やスキルはそのまま他社に持ち運び可能(ポータブル)である」「これまでこれだけの会社でこれだけの実績を上げていた人なのだから、きっとうちでも同じ活躍が見込める」という考え方ですね。ただ今、それが実は神話に過ぎないと、ようやく気づき始めてきたのではないでしょうか。
茂野 本当にそうですね。経験があるから大丈夫、とはいかないのが現実です。
田中 仕事の成果やパフォーマンスは非常に「文脈依存」です。業界知識や顧客理解はあっても、新しい会社に入ると、その会社特有の稟議の通し方や社内ネットワークなど、前職で使えていたリソースが使えないゼロリセットの状態になります。しかも、それらは必ずしも明文化されていません。「一体誰に聞けばいいのか」「直属の上司が本当に信頼を寄せているキーマンは誰か」といった文脈的で暗黙的なルールは、他社から持ち運べないのです。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
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