少子高齢化が急速に進展し、労働力不足が続く中で、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮し、継続的に活躍できる環境づくりが欠かせません。今回は、2021年(令和3年)に一部改正された高年齢者雇用安定法における、70歳までの就業確保措置についてガイドします。
必ずチェック! ポイント
- 65歳から70歳までの就業機会を確保する「高年齢者就業確保措置」は、対象企業の努力義務とされている。
- 措置には、170歳までの定年引き上げ、2定年制の廃止、370歳までの継続雇用制度、4業務委託契約を継続的に締結する制度、5社会貢献事業に継続的に従事できる制度の5つがある。
- 創業支援等措置(45)の導入には、実施計画の作成、過半数労働組合等の同意、労働者への周知が必要となる。
関連サイト・資料
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
- 厚生労働省「事業主・労働者の皆さまへ高年齢者雇用確保措置について(簡易版)」
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の概要」
- 厚生労働省「創業支援等措置の実施に関する計画の記載例等について」
3分でチェック! 高年齢者雇用安定法
高年齢者雇用安定法とは、働く意欲のある高齢者が、その能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を目的とした法律です。定年を60歳以上65歳未満に定めている企業は必ず、「高年齢者雇用確保措置」として、次の3つのいずれかを講じなくてはなりません。
- 65歳までの定年引き上げ
- 継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
- 定年制の廃止
なお、65歳までの継続雇用制度について対象者を限定できた経過措置は、2025年3月31日で終了しています。
これに加えて、定年を65歳以上70歳未満に定めている、または70歳未満を上限とする継続雇用制度を導入している企業は、「高年齢者就業確保措置」として、次の5つの措置を講じることが努力義務とされています。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に事業主が実施または委託・出資する社会貢献事業に従事できる制度の導入
本記事では、努力義務とされている「高年齢者就業確保措置」の内容を解説します。
対象企業
次のいずれかに該当する企業が、高年齢者就業確保措置の対象です。
- 65歳以上70歳未満の定年を定めている企業
- 継続雇用制度を導入しているものの、上限が70歳未満に設定されている企業
高年齢者就業確保措置の内容
対象となる企業は、高年齢者就業確保措置として、5項目のうちいずれかを講じることが努力義務とされています。複数を組み合わせることも可能です。複数の措置を設ける場合は、個々の高年齢者の希望を聴取し、その希望を十分に尊重したうえで、適用する措置を決定する必要があります。
なお、高年齢者が従来とは異なる業務に従事する場合は、必要に応じて、新しい業務に関する研修や教育・訓練等を事前に実施することが望ましいとされています。
170歳までの定年引き上げ
現在の定年年齢を70歳以上へ引き上げる措置です。70歳までの定年引き上げでは、一部の高年齢者だけを対象とする基準を設けることはできません。
ただし、労使間で十分に協議したうえで、社会通念上合理的と認められる範囲で職種や雇用形態によって異なる就業確保措置を講じることは可能です。
2定年制の廃止
就業規則等から定年の定めをなくし、一定の年齢に達したことを理由に雇用関係を終了させない制度とする措置です。
70歳などの定年年齢を新たに設定する「定年の引き上げ」とは異なり、年齢による一律の退職時期そのものをなくす点が特徴です。定年制の廃止についても、一部の高年齢者だけを対象とする基準を設けることはできません。
370歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
70歳までの継続雇用制度とは、定年後や現在の継続雇用制度の上限年齢に達した後も、高年齢者を引き続き雇用する制度です。再雇用制度や勤務延長制度などが該当します。
65歳までの雇用確保措置として継続雇用制度を設ける場合、継続雇用先は自社または特殊関係事業主[1]に限られ、希望者全員を対象とする必要があります。
注
[1]: 特殊関係事業主とは、自社の子法人や親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等を指します。
一方で、65歳から70歳までの継続雇用制度では、特殊関係事業主以外の他社での雇用も認められており、継続雇用できる企業の範囲が広い点が特徴です。
なお、65歳から70歳までの継続雇用制度では、対象者を限定する基準を設けることが可能です。ただし、「会社が必要と認めた者に限る」など、事業主が一部の高年齢者を恣意的に排除する基準は認められません。対象者基準は労使で十分に協議し、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。
470歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置では、働き方が「雇用」に限られない点も特徴的です。この雇用によらない就業確保措置として、45を合わせて「創業支援等措置」といいます。
創業支援等措置を導入する場合、業務内容や金銭、契約終了、安全・衛生などに関する計画を作成し、過半数労働組合等の同意を得たうえで、従業員に周知する必要があります。そのうえで、対象となる高年齢者と業務委託契約を締結することが必要です。
570歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
70歳まで継続的に、次のいずれかの社会貢献事業に従事できる制度の導入を行います。
- 事業主が自ら実施する社会貢献事業
- 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
高年齢者雇用安定法における社会貢献事業とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業をいいます。ただし、特定の宗教を広めて信者を教化育成することや、特定の公職の候補者や公職にある者、政党を推薦・支持・反対することを目的とした事業は、社会貢献事業に該当しません。
bの措置を講じる場合は、自社と社会貢献事業を実施する団体との間で、その団体が高年齢者に社会貢献事業へ従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があります。bの出資(資金提供)や団体の意味は、次のとおりです。
- 出資(資金提供)等:自社以外の団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度を選択する場合、自社から団体に対して、事業の運営に対する出資(寄付等を含む)や事務スペースの提供など社会貢献事業の実施に必要な援助を行っている必要があります。
- 団体:企業から委託、出資(資金提供)等を受けて社会貢献事業を実施している団体のことで、公益社団法人に限られません。
なお、この制度は「創業支援等措置」の1つであるため、導入する場合は4同様に事前に計画作成、過半数労働組合等の同意、従業員への周知も必要です。
公表・実施状況(令和7年)
厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は34.8%[2.9ポイント増加]でした。内訳をみると、実施済み企業の割合は大企業が29.5%、中小企業が35.2%であり、中小企業のほうが5.7ポイント高くなっています。
取り組み内容としては、65歳までの高年齢者雇用確保措置と同様に、継続雇用制度の導入実施企業が最も多くなっています。その他、要旨は次表のとおりです。
| 集計対象237,739社(うち就業確保措置実施済み企業82,748社) | |
| 定年制の廃止(9,367社) | 3.9%[変動なし] |
| 定年の引上げ(6,037社) | 2.5%[0.1ポイント増加] |
| 継続雇用制度の導入(67,212社) | 28.3%[2.7ポイント増加] |
| 創業支援等措置の導入(132社) | 0.1%[変動なし] |
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- この記事の著者
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横内 さつき(ヨコウチ サツキ)
Core Find Studio株式会社 代表取締役
採用コンサルタント、HRマーケター。HR専門のコンテンツマーケティング事業「人事ライター」の運営や、中小・小規模企業の採用代行・コンサルティング業に従事。求人広告営業、人材紹介営業、WEBベンチャーのディレクター職、フリーランスを経て2025年に法人化。別事...
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内山 美央(ウチヤマ ミオ)
新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーにて勤怠システムの営業・導入経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後はHRテックの知見を強みに、人事システムの導入支援、IPO・M&Aに向けた労務体制の整備、産育休・...
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