必ずチェック! ポイント
- 労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法等の一部改正により、カスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化される。2026年10月1日以降、すべての事業主が対応対象となる。
- 事業主は、カスタマーハラスメントに毅然と対応し、労働者を保護する方針を明確化する必要がある。併せて、カスタマーハラスメントの内容や対処方法の周知、相談体制の整備、被害者への配慮、再発防止、悪質な事案への対処方針の整備などが求められる。
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策では、求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針や求職活動等に関するルールの明確化、相談窓口の周知、事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止などが求められる。採用面接、インターンシップ、OB・OG訪問、教育実習・看護実習などが対象となる。
関連サイト・資料
3分でチェック! カスハラ・就活セクハラ対策義務
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」が、2025(令和7)年6月11日に公布され、職場におけるハラスメント対策が強化されました。
本改正により、これまで努力義務とされていたカスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます。2026年10月1日以降、事業主には、ハラスメントから労働者・求職者を保護する方針の明確化、労働者への周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応などが求められます。
カスタマーハラスメント対策では、事業主に雇用管理上の措置義務が課されるほか、事業主・労働者それぞれに責務が定められています。また、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策でも、事業主の方針の明確化や相談体制の整備等が求められます。
本記事では、2つのハラスメント対策について、対象者や事業主に求められる措置の内容を解説します。
対象企業・対象者
本改正は、すべての事業主と労働者が対象です。
職場におけるカスタマーハラスメントの定義【労働施策総合推進法】
職場におけるカスタマーハラスメントは、次の3つをすべて満たしているものと定められています。
- 顧客等の言動であること
- その雇用する労働者が従事する業務の性質と、その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
顧客等とは、事業取り引きをする相手方や、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者をはじめ、その事業主が行う事業に関係する者を広く含みます。実際に事業主が提供するサービスを利用した者だけでなく、今後商品・サービスの購入や利用をする可能性がある者も含みます。
また、カスタマーハラスメントは、直接対面で行われるものだけでなく、電話やSNS等のインターネット上で行われるものも対象となります。
カスタマーハラスメントを判断するポイント
カスタマーハラスメントかどうかを判断する際、顧客等から寄せられた言動が単なる苦情なのか、それとも「社会通念上許容される範囲を超えた言動」かを見極める必要があります。
「社会通念上許容される範囲を超えた言動」の典型例を参考にしながら、この言動の目的や、言動を受けた労働者側に問題行動がなかったかなど、総合的に判断しましょう。
- 【1】言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるものの例
-
- そもそも要求に理由がない、または商品・サービス等と全く関係のない要求
- 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
- 対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求
- 不当な損害賠償要求
- 【2】手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるものの例
-
- 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
- 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
- 威圧的な言動
- 継続的、執拗な言動
- 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
なお、【1】言動の内容、【2】手段や態様のいずれか一方のみが「社会通念上許容される範囲を超える」場合でも、カスタマーハラスメントに該当する可能性があります。
しかし、顧客等からの苦情すべてをカスタマーハラスメントと誤認しないよう注意が必要です。次のような言動は、カスタマーハラスメントに当たらないとされているため、併せて押さえておきましょう。
- 障害者から不当な扱い、差別的取り扱いをしないよう求めること
- 社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること
事業者に求められる取り組み
事業主には、カスタマーハラスメントに毅然とした態度で対応して、労働者を保護する旨の方針を明確化することや、相談体制の整備などが求められます。
| 事業主の方針等の明確化と、その周知・啓発 |
|
| 相談体制の整備 |
|
| 事後の迅速かつ適切な対応 |
|
| 対応の実効性を確保するために必要なカスハラの抑止のための措置 |
|
| そのほか併せて講ずべき措置 |
|
あらかじめ定めた対処の内容例としては、管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐことや、可能な限り労働者を1人で対応させないこと、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報したり、本社・本部などへ情報共有を行って指示を仰いだりすることが挙げられます。
労働者に求められる取り組み
同改正では、事業主が講ずべき措置だけでなく、事業主と労働者それぞれにカスハラ問題への理解を深めることや、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うことなどが「責務(努力義務)」と定められています。
- 事業主に求められる責務
-
- カスハラを行ってはならないことや、カスハラ問題について、労働者の関心と理解を深めること
- 労働者が、他の事業主に雇用される労働者に対して不適切な言動をしないよう、研修の実施など必要な配慮を行うこと
- 事業主自身もカスハラ問題への理解を深め、他の事業主に雇用される労働者への言動に注意を払うこと
- カスハラに関し、他の事業主から事実関係の確認等必要な協力を求められた場合には、これに応ずること
- 労働者に求められる責務
-
- カスハラ問題への関心と理解を深め、他の事業主に雇用される労働者への言動に注意を払うこと
- 事業主が講ずる雇用管理上の措置に協力すること
求職者等に対するセクシャルハラスメントの定義【男女雇用機会均等法】
求職者等に対するセクシャルハラスメントとは、事業主が雇用する労働者が「性的な言動」を行い、求職者等の求職活動等が阻害されるものを指します。求職者等とは、企業の求人に応募する者だけでなく、事業主の採用活動に参加する者や教育実習、看護実習を受ける者も含まれます。
また、求職活動等とは、カスタマーハラスメントと同様に、SNS等のオンラインを介したもの・オンライン上で行われるものを含みます。次のような幅広い形態の求職活動上で、セクシャルハラスメントが起きる可能性があります。
- 企業の採用面接(オンライン含む)
- 就職説明会への参加
- 求人企業の雇用する労働者のもとへ訪問すること(OB・OG訪問など)
- インターンシップへの参加
- 教育実習、看護実習など実習への参加
求職者に対するセクシャルハラスメントを判断するポイント
求職者に対するセクシャルハラスメントは、「性的な言動」の有無を判断します。性的な言動の具体例は次のとおりです。
- 性的な内容の発言
-
- 性的な事実関係を尋ねること
- 性的な内容の情報を意図的に流布すること
- 性的な行動
-
- 性的な関係を強要すること
- 必要なく身体に触ること
- わいせつな図画を配布すること
なお、求職者に対するセクシャルハラスメントは、男女問わず加害者・被害者になり得るものです。異性に対する性的な言動だけでなく、同性に対するものも該当する点に注意が必要です。
事業者に求められる取り組み
事業主は、求職者に対するセクシャルハラスメントを防止するため、求職活動等に関するルールを明確化することや、相談体制の整備などが求められます。
| 事業主の方針等の明確化と、その周知・啓発 |
|
| 相談体制の整備 |
|
| 事後の迅速かつ適切な対応 |
|
| そのほか併せて講ずべき措置 |
|
労働者に求められる取り組み
同改正では、事業主が講ずべき措置だけでなく、事業主と労働者それぞれに、求職者等セクハラ問題への理解を深めることや、求職者等に対する言動に必要な注意を払うことなどが「責務(努力義務)」と定められています。
- 事業主に求められる責務
-
- 求職者等セクハラを行ってはならないことや、求職者等セクハラ問題について、労働者の関心と理解を深めること
- 雇用する労働者が、求職者等に対して不適切な言動をしないよう、研修の実施など必要な配慮を行うこと
- 事業主自身も求職者等セクハラ問題への理解を深め、求職者等に対する言動に注意を払うこと
- 労働者に求められる責務
-
- 求職者等セクハラ問題への関心と理解を深め、求職者等に対する言動に注意を払うこと
- 事業主が講ずる雇用管理上の措置に協力すること
また、事業主は、大学のキャリアセンター等の関係者から求職者等セクハラに係る相談に関する情報提供があった場合に、連携し、適切な対応を行うことが望ましいとされています。
相談窓口
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が問い合わせ窓口です。

