広告業界のビジネスモデルそのものが、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌の「マス4媒体」に支えられた大量伝達モデルから、データを軸にした「顧客最適のマーケティング支援」へと変わりつつあります。クライアント側の内製化も進み、広告会社には「広告をつくる」だけでなく「事業を共創する」役割が求められるようになりました。さらにAIの進化によって、企画立案からクリエイティブ制作までの工程が急速に再設計されつつあります。こうした変革期において、競争力を左右する最大の資本が「人材」です。では、広告業界における従業員エンゲージメントはどのような状態にあるのでしょうか。
データで見る広告業界のエンゲージメント傾向
まず、広告業界のエンゲージメントの傾向を見るにあたって、分析方法と分析結果をお伝えします。
分析方法
本記事では、リンクアンドモチベーションが提供する従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」のデータをもとに分析を行います。この調査では、会社基盤や理念戦略などの「全体視点」から、直属上司の情報提供や支援行動、職場の目標共有や変革活動といった「現場視点」まで16領域において、従業員が会社に求める「期待度」と現状の「満足度」のギャップを測定しています。
分析結果
- 広告業界全体のエンゲージメントスコア平均は「53.6」で、全国平均を上回り、業界全体としては比較的高い水準にあります。
- 他業界と比較して、「仕事内容」「人的資源」「外部適応」「変革活動」など、仕事や人材に対する期待度が高いことが特徴です。
- 階層別ではいずれの階層も全国平均を上回る一方、課長層や30代のスコアが相対的に低いという特徴は他の業界同様の特徴となっています。
- エンゲージメントの高い企業と低い企業では、共通して30代のエンゲージメントが相対的に低く、課長のエンゲージメントで最も差が開いていました。
考察——広告業界の課題は「中間層の停滞」
ここで注視すべきは、「中間層の停滞」です。20代よりも30代のほうがスコアが低く、業界内で最もスコアが低い層となっています。本来、現場の中核を担い、次世代のリーダーとなるはずの30代が、20代よりも会社への熱量を失っているのです。また、エンゲージメントの高い企業と低い企業で最も差が大きい層は課長層となっています。エンゲージメントに課題のある広告業界の企業では、中間管理職がボトルネックとなりやすいことがわかります。
業界全体におけるエンゲージメントとの相関性の高い項目を見ると、その背景が浮き彫りになります。最も相関性の高い項目が「メンバーの目標達成意欲」、続いて「戦略目標への納得感」、「顧客意見に基づく改善」となっています。要するに、「現場のチームに勝ち癖と熱量があること」「経営の戦略が現場まで腹落ちしていること」「顧客の声を起点に組織が動いていること」が、エンゲージメントを大きく左右しているのです。
低エンゲージメント企業ではこの3つが弱く、戦略が経営層から下に伝わりきっておらず、現場は顧客起点ではなく、自組織起点な内向き体質になっていると考えられるでしょう。特に課長層や30代で、「メンバーの目標達成意欲」や「戦略目標の納得感」が相関の強い項目として現れていることから、本来経営層からのメッセージを翻訳して下に接続する立場の中間管理職の納得感が薄いことによって、組織全体のエンゲージメントを押し下げていることがわかります。
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花岡 健太(ハナオカ ケンタ)
株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント モチベーションエンジニアリング研究所 研究員。
東京大学農学部卒業後、大手損害保険会社を経て中途入社。従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」やコンサルティングを通じて、100社超の組織変革を支援。現在は、研究員としてデータ分析・活用も担う。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

