キャリア入社者に必要なアンラーンを阻むもの
茂野 本当にそうですね。最近はAIの登場によって環境の変化が激しく、キャリア入社した方の活躍の難易度がさらに上がっています。前職から入社までに半年空くだけで世界が変わっている可能性すらある。これまでの実績はあくまでポテンシャルであり、いかに新しい環境での成果につなげるかは、企業側が設計しなければならない時代です。
田中 むしろ、これまでの成功体験が足かせになってしまうケースもありますよね。

茂野 過去の成功体験を「アンラーン(学習棄却)」していただく必要があります。これまで「アンラーンできない人」というのは「本人の資質の問題」と捉えられがちでしたが、そうではないと気づきました。関係構築がうまくいかない、不安がある、成果が出せないといったタイミングで、どうしても過去の成功体験に頼りたくなってしまう。そうした「追い込まれた心理状況」という環境要因がアンラーンを阻んでいるケースが多いのではないでしょうか。
田中 ご本人には固執している自覚すらありません。当たり前を適用しようとしているだけなのに「周りが理解してくれない」と殻に閉じこもってしまう。しかし、キャリア入社の人は、孤独になると“詰んで”しまいます。同期もおらず、上司は即戦力として期待している。本人も期待に応えようと過剰に鎧(よろい)をまとって弱みを出せなくなる。周囲も即戦力として扱い、本人も無理をするという「共犯関係」で失敗してしまうストーリーになっている気がします。
茂野 上司と部下の「縦の関係」はプレッシャーが働くため、同僚との「横のコミュニケーション」や他部署との「斜めの関係」の構築が非常に重要です。支援がないと孤立し、過去の成功体験に頼って「ではの神(前職ではこうだったと言い出す状態)」になってしまい、周囲とのデバイド(溝)がさらに深まってしまう。ちなみに、この“ではの神”については田中先生に教えていただきました。

田中 まさにそうですね。また、日本の大企業などでは管理職層はプロパー(生え抜き)の比率が高いため、キャリア入社の人が抱える孤立感や課題を当事者として実感しにくい。「自分の我流でやれば大丈夫だろう」と済ませてしまうスタンスが、構造をより難しくしているように感じます。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

