「部下を変えるのは言葉ではない」——では管理職がマネジメントすべきものとは?小林氏が語る“間と温度”
事業環境の変化や多様化する部下への対応により、管理職の負担が深刻な課題となっている。多くの企業が研修や1on1などの施策を導入している一方で、「組織に変化が起こらない」「かえって管理職の負担が増えてしまった」と悩む人事担当者が後を絶たない。そこで、「マネジメントサクセス」を掲げる株式会社mentoの丹下恵里氏をホストに、有識者や実践者と“本当の管理職支援”とは何かを探求する連載を開始。第1回のゲストは、大ヒット書籍『罰ゲーム化する管理職』にて、管理職をめぐる構造的な課題を浮き彫りにした小林祐児氏。後編では、「心でっかち」な社会において管理職自身も誤解しているな部下との向き合い方や、マネジメントの2つの視点、人事に求められる本来の役割など盛りだくさんでお届けする。
部下を変えるのは言葉ではない——心でっかち社会の誤解
——エンゲージメント、モチベーション、内発的動機付けなど、どれもマネジメントでよく聞く言葉です。「コミュニケーションとは非常に相性が悪い」のはなぜですか。
小林 祐児氏(以下、小林) 人の心は目に見えないからです。「今感動しているね」「やる気があるね」なんてことは、最終的にはわからないじゃないですか。
見えないものを絶対の基準にしようとすると、いくらでも疑えてしまいます。「やる気があるように見えるけど、ふりをしているだけかもね」といったように。いくらコミュニケーションを尽くしたところで、相手の誠実性そのものを測ることはできません。だからこそ、言葉による説得や説教で人の心を動かそうというロジック自体が、そもそも非常に難しいものなのです。
小林 祐児(こばやし ゆうじ)氏
株式会社パーソル総合研究所 主席研究員 執行役員 シンクタンク本部長
上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行う。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。著作に『職場の対話はなぜすれ違うのか』(光文社)、『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル)、『リスキリングは経営課題』(光文社)、『学びをやめない生き方入門』(テオリア)、『残業学』(光文社)など多数。
丹下 恵里氏(以下、丹下) 部下と向き合う管理職自身も、ウェットになりすぎているのかもしれません。
小林 コミュニケーションについて話すと、「信頼感が大事ですよね」「心理的安全性が大事ですよね」という人は非常に多いです。
対話系の研修でも、「どうしてもやる気が出ない若手がいるんですけど、どうしたらいいですか」という質問がよく来ます。私はいつも、「また心でっかちに捉えているな」と思うのですが。
丹下 そのような質問には、なんて答えているんですか。
小林 「部下の心をコントロールしようとしないでください」と伝えています。人のやる気を自分が動かせると思ったら、それは心でっかちすぎ。まず、「やる気なんて関係ないのが仕事だ」という規範にしたほうがよいし、部下の「心」を動かすのではなく、部下の「周り」を動かす工夫をすべきです。
つまり、メンタリング・異動・紹介・懇親・横断PJTなどで、「部下が誰と話すか」「どのくらい多様な人と仕事をしているか」を変えることです。自分ではない他者とつなぐことによって、読ませる「空気」そのものを変える。狭いつながりのままでは下がりがちな仕事の視点・視座を上げる工夫です。
丹下 その人に入ってくる情報や環境を変えれば、考え方も自ずと変わりますよね。本人が変わる環境をつくることが、管理職の役割なのかもしれません。
小林 そうです。みんな、人を変えようとしているんですよ。個人と企業の関係などといって、「個」ばかりに注目している。
組織を細胞に例えるなら、細胞と細胞の間には組織液が流れていますよね。細胞そのものの中身はブラックボックスなのだから、組織液を変えたほうが、結果的に細胞も生き生きします。人の中身ではなく、人と人の間を変えるという発想の転換です。
これを私は「間(あいだ)のマネジメント」と呼んでいます。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)
1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。
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