「部下を変えるのは言葉ではない」——では管理職がマネジメントすべきものとは?小林氏が語る“間と温度”
「間のマネジメント」は、組織にしかできないお節介
丹下 その「間のマネジメント」を、管理職が1人で頑張るのではなく、人事や経営も含めて支援していくべきだと思います。どのような手法があるのでしょうか。
小林 少し大きい話になりますが、人と人のつながり方という「ネットワーク」を変えられるのは、もう会社だけだと思っています。
アメリカなら家族、ヨーロッパなら地縁といったように、各社会にはそれぞれ強制力を持った「社会関係資本」があるんですけど、今の日本では地縁、家族、宗教などほぼ全部が廃れてきています。これで社縁まで手放すと本当に人は孤立してしまいます。
みんな出社しているのに孤立している状態になりつつあるうえに、仕事が終わった後に自らの力で人との縁をゼロからつくれる人なんてそういません。みんなが会社員として死ぬわけではないのだから、「会社というリソースがあるうちに、人とつながっておいたほうがいいよ」と伝えています。
ただ、人間関係というと、みんなすぐに「信頼」や「心理的安全性」に置き換えてしまう。
もっと単純に、「頻度と量と密度」というドライな視点で人間関係を設計すべきです。AさんとBさんがどの頻度で会っているのか、部下と何回喋っているのか、どんな話題まで喋っているのか——。それは心の問題ではなく、設計の問題です。
社会の仕組みの中で、この人間関係をいじれるのは組織だけです。だからこそ、会社が人間関係において積極的に“お節介”を焼く存在であるべきです。1on1やメンタリングも、心を動かす制度としてではなく、人間関係を構築・維持する仕組みとしてドライに設計することが必要です。
なぜ部下は仕事に“冷めて”いるのか——4つの「職場の冷却源」
小林 またもう1つ、「温度のマネジメント」も重要です。
前編でもお話ししたとおり、今は会社に対して冷めている若手が多い。それは個人の問題だけでなく、職場に4つの「冷却源」が存在しているからです。
1つ目の冷却源は、「過剰な気遣い」です。対話の時代に、「ここまで言ったら傷つけるかも」「人の意見を否定しないようにしよう」といった考えが広がりました。否定しないということは議論しないということで、仕事をめぐる健全な対立も失われます。
2つ目は、数字にとらわれる「カオナシ化」です。インプレッション、エンゲージメント、KPIなどの数字を追って、仕事の向こう側にいる人が見えなくなり、誰かのために働いている実感を失った中で熱くなる人間はいないんです。これは、インターネット普及後の仕事のあり方として広がりました。
3つ目は、「出がらし仕事」。効率性を追い求めているがゆえに、判断はベテランや上司が全部やって、仕事から判断が抜けた誰でもできる作業を若手に渡すことです。出がらし仕事はかんたんなので仕事が回っている、若手が育っていると勘違いしてしまいますが、やめたほうがいいです。タスクを渡すのではなく、判断をさせることが仕事への熱を高めます。
最後の冷却源は、「AI仕事」です。AIによる資料やメールがいかに人を冷めさせるか……。「AIに頼って自分で考えないんだ」と伝わることで、カオナシ化を増やすことにもつながります。
これらの冷却源がはびこるトレンドは変えにくいので、職場からこれを1つひとつ潰していくことが大切です。
丹下 4つの冷却源を聞いて、仕事の面白さを思い出そうという話なのかなとも思いました。
丹下 恵里(たんげ えり)氏
株式会社mento 取締役 副社長
リクルートで新規事業開発や海外スタートアップ支援に従事。メルカリでマスマーケティングやプロダクト開発を担当。mentoのレベニュー組織を統括。2025年5月より取締役 COOから取締役 副社長へ就任。
小林 そうですね。仕事の面白さは人を経由するんですよ。特に日本人はこの人に恥ずかしい思いをしたくないとか、この人に悪く思われたくないというモチベーションが非常に強い。
だから私は、空気を読むようになった日本の変化に絶望はしていません。人の顔を見せてあげれば、ちゃんとその人のためになんとかしようと思い、その中で落ちこぼれたくないと思う人たちです。だからこそ、仕事の中に顔を取り戻すこと、「間のマネジメント」が効果的なのです。
丹下 確かに、やる気のない部下に対し、「怒るか、怒らないか」という外圧の議論になりがちですが、「どう仕事に熱中している状態をつくれるか」という視点を持てるとよいのかなと思いました。
小林 顔が見えるようになるだけでだいぶ違うと思いますよ。
トヨタのある部署が去年から始めた研修で、自分1人で車のドアを組み立ててみるというものがあります。みんなモニターを相手に仕事をするようになり、ドアの組み立て方がわからない人が増えたからです。これはまさに、物理的な仕事の手触り感を得るための取り組みです。何十年も続く製造業があえて今それをやっていることに、私は感動しました。この感覚は、多くのホワイトカラーも真似したほうがいいと思います。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)
1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。
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