タレントマネジメントはAIで次のフェーズへ 「タレントインテリジェンス」で進化するAI時代の人事とは
人事領域でのAI活用が加速する中で、今、多くの企業が人事データの分断という課題に直面している。タレントマネジメントを導入している企業でも、断片的なデータ分析にとどまり、組織や経営の意思決定に活用しきれていないのが現状だ。そんな中、株式会社カオナビは昨年10月に新ビジョン「Talent intelligence(タレントインテリジェンス)」を発表し、AIの力で人事データの活用を進化させる方針を示した。タレントインテリジェンスによって人事の実務はどう変わるのか。同社で執行役員 COOを務める最上あす美氏に、タレントインテリジェンスの全容と、これからの人事の在り方を聞いた。
タレントマネジメントから進化 「タレントインテリジェンス」とは何か
——カオナビは、2025年10月に新ビジョン「Talent intelligence」を発表しました。タレントインテリジェンスとは、どのような考え方ですか。
タレントインテリジェンスは、AIを活用して人事データの深い分析を可能にする新たな概念です。「タレントマネジメント」をAIによって一歩進化させたイメージですね。
これまでカオナビでは、タレントマネジメントの推進を掲げてシステムを提供してきましたが、人事データの「活用」まで至らず、データの一元化・可視化で止まってしまうケースがあることが課題でした。
そこで、従来のタレントマネジメントシステムにAI(インテリジェンス)を組み込むことで、人事データを「どのように施策に活かすべきか」「次にどんなアクションをするべきか」といった業務での実践的な活用へと昇華したいと考えたのです。この「示唆出し」までしてくれるのが、タレントインテリジェンスの大きな特徴です。
最上 あす美(もがみ あすみ)氏
株式会社カオナビ 執行役員 COO
ぐるなびでの新規営業、不動産企業での人事経験を経て、2015年に当社に入社。独自のセールスモデルを設計・運用し、インサイドセールスの礎を築く。その後、カスタマーサクセスの立ち上げと組織強化に貢献。カスタマーエンゲージメント部門責任者を経て、2024年よりCOOを務める。
——従来のタレントマネジメントでは、なぜ実践的なデータ活用が難しかったのでしょうか。
タレントマネジメントでは、定量情報は分析できるものの、定性情報の分析が困難でした。たとえば、出勤日数や従業員サーベイで集めた5段階評価の数値は分析できる一方で、1on1の記録やアンケートのフリーコメントは収集・蓄積するだけで終わってしまいがちです。
型にはまった情報しか分析できないという点が、タレントマネジメントの課題でした。しかし、人材戦略を考えるにあたって、定性情報を含めた奥行きのある情報を捉えることは非常に重要です。
ここにAIを掛け合わせることで「定性情報」までカバーできるのがタレントインテリジェンスです。AIであれば、数値化できないテキストも読み込んで分析できます。
AIという革新的な技術を駆使して、タレントマネジメントがさらにアップデートされ、現場の方々が人材戦略に対して意味のある示唆を得られる。これがタレントインテリジェンスが実現する世界観です。
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“隠れた真因”を特定しキャリア自律を支援——分断されたデータの壁をどう乗り越えるか
——最上様が多くのユーザーと向き合う中で、いまの企業の人事の実態や課題をどのように捉えていますか。
現在、多くの企業が関心を持っているのは従業員の「キャリア自律」です。
年功序列での昇進はなくなり、個人が意思を持ってキャリアビジョンを描くことが求められていますよね。また、キャリアを追求して転職するという選択肢も当たり前になっているため、企業は「選ぶ」から「選ばれる」立場へと変化しています。そこに、人的資本経営の流れも加わって、従業員のキャリア自律を前提としたキャリア支援に取り組む企業が増えているのです。
キャリア自律の支援は、従業員個人の志向と、企業が用意するポストや働き方のギャップを捉えて初めて可能になりますが、マネジメントや人事の手がそこまで回っていないケースが散見されます。
タレントインテリジェンスはこの問題を解決する糸口になると考えています。
——具体的に、タレントインテリジェンスがどのように作用するのでしょうか。
社内には、従業員の評価やスキル、キャリア志向に関するデータが眠っています。タレントインテリジェンスでは、AIがそういった従業員の現状とWillのギャップを捉え、実現したいキャリア像への道筋を示唆してくれます。
タレントインテリジェンスが導き出す示唆を参考にすることで、従業員は自身の現状のスキルと理想とするキャリアとのギャップを客観的に把握し、目標達成のために必要な学習を自律的に実践できるようになります。また人事は、個々の従業員に最適な育成計画を策定できるほか、中長期的な視点で組織にどのようなポジションが必要になるか分析することも可能になるでしょう。
これは、タレントインテリジェンスがAIによって従業員にまつわる多角的な情報を捉えられるからこそ実現できることです。従来のタレントマネジメントでは、「評価」や「従業員サーベイ」といった1つの要素だけを分析した結果から、偏った判断になってしまうこともありました。
たとえば、1on1の記録だけを見れば単に「最近ネガティブな発言が目立つ」という表面的な事象しか捉えられないかもしれません。しかし、タレントインテリジェンスであれば、その真因が一時的な体調不良によるものなのか、人間関係の摩擦なのか、多角的なデータと照らし合わせることで隠れた真因を読み解く示唆を得られます。
あらゆるデータを掛け合わせることで、より本質的な意思決定を支えることができるのです。
——そのためには必要な人事データが蓄積され、一元化されていることが重要だと思いますが、昨今の企業におけるデータの「状態」はいかがでしょうか。
従業員のキャリアビジョンや、面談の情報といった定性情報は蓄積できていない企業が多いです。従業員自身に入力を促しても、忙しい業務の中でなかなか記入が進まないという課題があります。従業員も、個人としてのメリットがないと登録するモチベーションを持ちづらいですよね。
加えて、「人事データの分断」も大きな課題です。評価や労務、採用といったさまざまな情報を保持してはいるものの、それらのデータ構造が異なるゆえに、データを一元化することに障壁を感じている企業が多い印象です。
タレントインテリジェンスを活用するにあたっては、データが一元化されていないと示唆出しの精度が下がってしまうという問題があります。
たとえば、AIが学習できるデータが残業時間と人事評価のみだった場合、「残業が多いほど評価が高い」といった示唆を提示してしまう可能性があるでしょう。AIがアクセスできるデータの質と量、そして鮮度が高いほどAIの示唆出しの精密さも向上します。
今後、タレントインテリジェンスを仕組みとして提供していくにあたっても、ここが重要な観点だと考えています。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)
1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。
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岡田 果子(オカダ カコ)
IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。
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