私たちの職場に押し寄せる「対話の波」
1on1ミーティング、キャリア面談、コーチング、ワークショップ——今、大企業からスタートアップまで、従業員同士の「対話」を促進する動きが高まっています。ある調査によると、1on1を導入している企業は7割にも上っているようです[1]。
みなさんの会社でも、1on1ミーティングなど、社内コミュニケーションを増やすことを目的とした取り組みを行っているのではないでしょうか。
そもそもなぜ、あらゆる企業で「対話」が重視されるようになったのか。
書籍『職場の対話はなぜすれ違うのか』(小林祐児 著/光文社新書)では、「対話の時代」が訪れた要因を「組織の多様化」「キャリア支援」「イノベーション」「不祥事防止」「エンゲージメント向上」の5つに整理しています。そのどれもが今や「対話」がなければ成り立たないのは、人事のみなさんにとって想像に難くないでしょう。
著者はさらに、さまざまなデータを用いて「多くの従業員が本音で話せていないこと」「部下を叱れない上司」「叱られたくない部下」といった日本の職場に生まれている「対話疲れ」を指摘します。
対話によって多くのビジネス課題が解決されることが期待されながらも、現実には逆風が吹き荒れていることを示しているのです。
さて、コミュニケーションについて考える前に私たちがまず事実として押さえるべきは、会社は「対話が必要だ!」と施策を進めているにもかかわらず、人々は、実態としても願望としても、職場での深いコミュニケーションから遠ざかっていっているということです。(p.49)
どうやって対話を“実践”するか
「対話を推進したい派」と「対話なんていらない派」。この両者のすれ違いの根底にあるのは「コミュニケーション観」の違いだと仮説を立て、著者はコミュニケーションに関するさまざまな議論や研究を紐解いていきました。
そして、コミュニケーションの捉え方(=モード)を「小包モード」「円卓モード」などの5つに整理。それぞれのモードを解説したうえで、「対話の実践」へとつなげていく点に、本書のおもしろさがあります。
本書は、「講義編」と「実践編」の2部構成になっており、講義編では対話を取り巻く実情やコミュニケーションの5つのモードが解説されています。読み進めると、“職場での対話はなぜすれ違うのか”がどんどん見えてきて、腑に落ちる感覚があります。
そのうえで、私がこの本を特におすすめしたい理由は、続く実践編の分厚さです。そのボリュームは、なんと本書の約半分。コミュニケーションの捉え方を理論として整理するだけでなく、現場で「実践」するための指南書として、多くのページが割かれているのです。
このページ数からも、著者が単なる理論の解説にとどまらず、ビジネス課題を解決するリアルな打ち手として、人々や組織を幸せにするコミュニケーションとして、「対話」の力を信じていることが伝わってきます。
コミュニケーションのモードを掴み、自分の中に他者と向き合う「構え」をつくる。そうして改めて、組織の中でどのように対話を設計し、仕掛けていけばよいのかを考えたとき、きっとこれまでとは全く異なる世界が見えてくるはずです。
本書では、具体的な教訓や仕組みづくりも紹介されているので、ぜひ手に取って確かめてみてください。さまざまなビジネス課題の“拠り所”である「対話」について、ご自身や職場のコミュニケーションを根本から見直すきっかけとなるでしょう。
注
[1]: リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティングに関する実態調査」

