1人で課題発見から解決まで取り組む「モノづくり実習」
——まずは、貴社のデータサイエンティストの役割を教えてください。
徳永和朗氏(以下、徳永) データサイエンティストには、3つの要素が必要だといわれています。1つ目が「ビジネス力」。2つ目が「データサイエンスの知見」。3つ目が「データエンジニアリングのスキル」です。それらを持ち合わせた人材が、顧客課題を抽出し、分析結果から解決策を提案、システム化をリードする役割を果たしています。
日立は製造現場を有しているため、モノづくりの現場と直接対話できる点が特長です。OT(運用・制御技術)とITを組み合わせ、迅速に実効性のあるソリューションを提供できます。

——では、実践型現場研修「モノづくり実習」についてお伺いします。この実習は、データサイエンティストの育成プログラムにおいてどのような位置付けなのでしょうか。
大野佐代子氏(以下、大野) 「モノづくり実習」とは、入社1年目のデータサイエンティストが、日立グループの製造現場での配属を通じ、課題発見からデータ分析、構築までを1人で進める研修プログラムです。現場の課題に直接触れることによって、日立ならではのデータサイエンティストを育成することを目的としています。
実習という形でものづくりの現場を体験することによって、実際に顧客の案件を担当する際の自信を培ったり、現場で使える知識や技術を習得したり、日立への帰属意識を高めたりする機会になると思っています。

「日立らしい人財」の基礎が身に付く 培ったコネクションも大きな財産に
——1人で実習を行うのですか。
大野 はい、このモノづくり実習は、1~3月の3ヵ月間に渡って集中的に行います。この時期であれば、配属された部署でのOJTも一段落しており、社会人としてのマナーやデータサイエンティストとしての基礎的な知識・スキルは身に付いているので、現場に1人で入っていっても大丈夫だと考えています。
——“実践型現場研修”というだけあって、研修後の仕事とほぼ同じ業務を行う印象を受けました。
徳永 業務内容は同じですね。ただ、研修後にデータサイエンティストとして入るプロジェクトは、マネジメントや課題の提案、データ分析、システムの構築など役割が細分化されており、経験を重ねないとトータルで見ることはできません。一方、モノづくり実習は1人で現場に入っていくので、課題を見つけ出すところから一気通貫で関われます。それだけに、その後のキャリアに向けて大きな糧となります。

実習先となる現場の方たちにとっても、「日立の人財を自分たちが育てることで、日立自体が大きくなり、それが自分たちの価値になる」というモチベーションになるので、親身に育ててくれます。そこでの経験やコネクションが、将来、日立の中で日立の中でさまざまな業務に取り組む中で生きてくると思います。
大野 これは日立ならではの良さですね。日立の未来を担う人財だということで、現場は温かく迎え入れてくれます。そのような空気の中で、現場の課題を自ら見つけ、OT[1]とITを融合して解決に導ける日立らしい人財としての基礎を身に付けられるのです。また、実習ではチャレンジしやすく、失敗も受け入れられやすい環境にあります。その経験を活かして次の成功につなげられるのも、モノづくり実習の魅力だと思います。
注
[1]: Operational Technology。製造業や社会インフラの設備やプロセスを制御・運用するための技術のこと。