情報処理技術者試験の受験手数料(いわゆる受験料)は、「情報処理の促進に関する法律施行令」という法律に定められており、平成9年(1998年)度秋期試験か平成27年度秋期試験までの18年間、5100円(税込)が維持されてきた。
しかし、IPAならびに情報処理技術者試験センターを管轄する経済産業省では、今後も安定的に試験制度を運営する観点から、受験手数料の見直しを決定。「情報処理の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成27年12月22日閣議決定)」により、来年、平成28年(2016年)度春期試験から(ITパスポートは同年4月1日から)、5700円(税込)に改定する。
改定の背景には、受験者数の減少に歯止めがかからないことがある。IPAの発表の中にも、「受験者数の動向などを踏まえ」とある。最も顕著なのは基本情報技術者試験。平成21年(2009年)度は春期・秋期合計で19万8552名の応募があったところ、平成27年度は春期・秋期合計で13万8791名の応募と約30%減少した。その他の試験も、平成22年度あるいは平成23年度をピークに下落している。唯一、情報セキュリティスペシャリストはピーク時に近い受験者数を維持している。
さらに、少子化により受験者数は減少が基調となる。「今後も安定的に試験制度を運営する観点から」という言葉どおり、今回の値上げはに踏み切らざるを得なかったといえるだろう。
ただし、値上がりするとはいえ、5700円は多くのIT資格試験と比べれば数分の一の価格。また、特定の製品などに依存しないため、現場のスキルとしてすぐに効果が発揮されにくい一方で、コンピュータサイエンスの基礎から、システムの開発・運用、組織運営まで、ITで企業・ビジネスを支える人材としての能力を幅広く測れるという他の資格にないメリットもある。
資格試験はあくまで人材育成やスキルアップのツール。試験で問う技術が、現実世界の技術革新になかなか追いつかないという課題はあるが、食わず嫌いせず、まずは試験の中身を見てみるとよいだろう。