中途入社者の約半数が1年以内に退職している
これまで、日本企業では新卒一括採用が中心でした。しかし昨今、中途採用に力を入れる企業が増えています。日本経済新聞社による採用計画調査[1]によると、2023年度の採用計画に占める中途採用の比率は過去最高の37.6%となり、16年度から7年で約2倍に上昇しています。
なぜ、中途採用に重きを置く企業が増えているのでしょうか。
企業に質問すると、まず挙がるのが「若手中堅層の人材不足」です。業種・職種を問わず、20代後半~30代前半の若手中堅層の退職が多く、この層を充塡するために中途採用を増やしている企業は少なくありません。他にも、ITスキルを筆頭に、高度な専門性を有する人材を求める企業が増えていることも、中途採用市場に注目が集まる大きな理由といえるでしょう。
このように中途採用が活性化する一方で、中途入社者の約半数が1年以内に退職しているという調査結果があります[2]。中途入社者の早期退職は、採用・育成コストが無駄になるだけでなく、既存社員に業務のしわ寄せが及び、従業員エンゲージメントが低下するなどの悪循環を招きます。
つまり、中途採用を拡大する企業にとって最優先の課題ともいえるのが中途入社者の「定着」であり、そのために今注目されているのが「オンボーディング」なのです。
「組織」に適応できないと中途入社者は定着しない
オンボーディングとは一般的に、中途入社者を含めた新入社員が会社に適応し、早期に力を発揮できるように実施する施策のことを指します。その際、「適応」する対象は、「仕事」「組織」の2つあります。仕事への適応は、求められている業務を理解し、実践できるようになることです。組織への適応は、組織の一員として受け入れられ、その会社の風土になじむことを指します。
中途入社者を迎え入れる多くの企業は、仕事への適応ばかりに目を向けがちです。しかし、組織に適応することなく、仕事に適応するのは難しいものです。たとえば、どんなクラスの中心人物でも、転校先の学校ですぐに人気者になることはできないでしょう。また、そうそうたる実績を引っさげて移籍した野球選手でも、新チームですぐに活躍できる選手はごく一部です。同じように、どれだけ優秀な中途入社者でも、新しい会社になじめないために、持っている力を十分に発揮できないケースは少なくありません。
つまり、組織に適応できないと仕事にも適応できず、早期退職につながりやすくなります。中途入社者のオンボーディングでは、まず組織への適応を促したうえで、仕事への適応を促す。この順番が重要です。