イエソドは、従業員数300名以上の企業に勤務する情報システム・人事部門の担当者を対象に、「人・組織マスタ不在問題に関する実態調査」を6月に実施した。
社員・組織データは1人あたり平均3業務で活用。特に人事と情シスで幅広く利用
自身の所属・管轄している部署では、社員や組織に関する情報・データをどのような業務に利用しているか聞いたところ、回答者397名に対して延べ1191件の活用が確認された。
中でも、人事業務・人材管理領域での活用が突出し、続いてIT/ID管理・セキュリティ対応でも72.5%の企業が活用。人事部門と情報システム部門の双方にとって不可欠な情報であることが明らかになった。
また、入退社や組織変更に伴うID管理業務(52.1%)では、人事部と情報システム部の連携が求められるため、両部門の連携を前提としたデジタル基盤が鍵になるという。
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社員・組織データの管理は人事系システムに分散傾向、いまだExcelなどでの管理も残る
自身が所属・管轄している部署で、業務において利用している社員や組織に関する情報・データはどのような形式かを質問すると、管理手段としては、「人事系システム・サービス」が60.5%で最多となった。
一方、「Excel」が35.8%、「スプレッドシート」が15.6%と手作業も多く、チャットやグループウェアで共有されるケースもあった。加えて、データ管轄部門も人事・情シス・総務・経理などに分散し、整備された基盤に一本化されていない現状がうかがえる。
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全社で統合・共有される「人・組織マスタ」を保有していない企業は約半数
勤め先では、全社・全雇用形態の社員・組織の情報・データを部門をまたいで全社で共有する「人・組織のマスタ」はあるか聞くと、「全社で整備・共有されている」と回答した企業は55.2%となった。
一方で、「整備されていない」「分からない」とした企業は44.8%にのぼり、データがシステム・部門単位で分断され全社的な統合には至っていない実態が浮き彫りとなった。
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「情報の不整合」「業務の非効率」「セキュリティリスク」が発生
人・組織マスタが存在しないことによる業務上の課題として、最も多かったのは「不要な工数の発生」で15.6%。次いで、「システムの分散による管理の困難さ」が14.3%など、情報の一貫性欠如による非効率が目立った。
また、「データが見つからない/そろわない」が13.9%、「意思決定の遅れ」が7.8%など、情報活用の精度・スピード低下、属人化やセキュリティ不備も挙げられており、IT統制と業務効率の両面で影響が出ていることが分かった。
「人・組織マスタ」整備が進まない背景に、技術的制約と組織的無関心
勤め先において、社員や組織の情報・データの部門をまたいだ全社共有(『人・組織のマスタ』の整備)が進まない要因はどのようなものか聞いたところ、最も多かったのは「分からない」で55.0%だった。これは、現場レベルで課題が顕在化・言語化されていない企業が多いことを示しているという。
理由を選択した回答の内訳を見ると、「更新・メンテナンス体制の不十分さ」が14.7%、「老朽化したシステムの残存」が13.4%などで、技術的な制約・IT環境関連が合計46.2%となった。また、「推進できる人材や体制の不足」が9.5%、「責任主体の不明確さ」が9.5%など、組織の体制・文化関連は合計38.2%と、大きな要因となっている。
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「人・組織マスタ」整備によって期待される業務改善効果
「人・組織マスタ」整備により、業務効率や生産性の向上(例:対応工数削減 20.8%、対応時間短縮 17.7%)とともに、意思決定や社内コミュニケーションの質的向上(例:意思決定の高度化 17.3%、対応の質の向上 17.7%、部門間の円滑化 18.2%)にも大きな期待が寄せられた。単なる業務効率だけでなく、組織全体の質的改善につながる基盤として、「人・組織マスタ」の役割が注目されている。
課題は「浮いたまま」、実施率わずか5.6%
「人・組織マスタ」がないことへの具体的な対応を行っている企業は5.6%にとどまり、今後の取り組み予定がある企業も14.7%と、実際の着手は限られていることが分かった。
一方で、「分からない」と回答した割合が61.0%と半数を超えており、マスタ整備の必要性は理解されつつも、社内での課題感の共有不足や、推進主体や責任範囲が明確になっておらず、導入が停滞している実態が浮かび上がった。
なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査対象:従業員数300名以上の企業の情報システム・DX部門、人事部門所属の人
- 調査方法:インターネットを介したオンラインパネル調査
- 調査期間:2025年6月25日〜約1週間
- 有効回答数:516件
- 調査企画:イエソド
- 調査委託先:マクロミル
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