ALL DIFFERENTおよびラーニングイノベーション総合研究所は、社会人1~4年目の若手社員1793人に対し意識調査を実施。若手社員の成長実感やキャリア志向について分析した結果を、以下のように伝えている。
1. 任される仕事が自分の成長につながっている実感、社会人1年目は64.8%。社会人4年目は半数以下
まず、いま任されている仕事は、自身の成長につながっていると感じるか(成長実感)を尋ねた。社会人1年目社員は「感じる」と回答した割合が27.2%だった。「やや感じる」の37.6%を含めると、64.8%が成長につながっていると回答した。一方、社会人4年目社員は「感じる」(15.7%)、「やや感じる」(32.8%)となり、その合計は48.5%で、社会人1年目社員に比べて16.3ポイント低い結果となった。
「感じる」「やや感じる」を含めた割合は、社会人2年目社員が57.3%、社会人3年目社員は56.4%で、社会人歴が上がるにつれて成長実感が低下する傾向が見られた。
2. 新しい業務を任される実感、社会人1年目は63.9%も、社会人歴が長くなるにつれて低下傾向
仕事による成長実感は社会人歴が上がるにつれて低下している背景には何があるのか。
若手社員はどのような仕事を任されているか、という側面から分析するため、「同じ内容の業務ばかりでなく、スキルや経験に応じて新たな業務を任されていますか」と質問したところ、「はい」「どちらかといえばはい」と回答した割合は、社会人1年目社員は63.9%、社会人2年目社員は56.6%、社会人3年目社員は55.8%、社会人4年目社員は51.1%だった。社会人歴が長くなるにつれて新しい業務に挑戦する機会が減る傾向が読み取れた。
3. 業務につながる知識・スキルの強化に取り組む4年目社員は46.3%で、1年目より14ポイント低下
若手社員は、自身ではどのような努力をしているのか。
「自身の業務につながる知識・スキルを強化する努力をしていますか」という質問に対し、「している」「ややしている」と答えた割合は、社会人1年目社員は60.3%だった一方、社会人2年目社員は49.9%、社会人3年目社員は51.8%、社会人4年目社員は46.3%だった。知識・スキル強化をしている社会人4年目社員の割合は、社会人1年目社員に比べて14.0ポイント低く、業務につながる知識・スキルの強化は社会人1年目社員が最も努力していることが明らかになった。
4. 将来のキャリア志向、「未定」「志向なし」の回答割合、社会人4年目が最も高く約半数
若手社員は、将来のキャリアについてどのように考えているのか。
「将来会社でどのような役割を担いたいですか」という質問に対する回答を社会人歴ごとに集計したところ、社会人1年目社員と社会人3年目社員では「スペシャリストとして専門領域を極めたい(専門職)」がトップとなった。また、社会人2年目社員と社会人4年目社員は「特にキャリアについての志向はない」の回答割合が最も高くなった。
一方で、「マネジメントを行いチームを統率したい(管理職)」と回答した社会人1年目社員は12.5%で、社会人2年目以降はいずれも1割を割り込んだ。
「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」「特にキャリアについての志向はない」の回答割合は、どちらも社会人4年目社員が最も高くなり、その合計は48.7%だった。
5. 上司からのキャリア形成支援がある若手社員ほど、管理職・専門職を目指す割合が高い
若手社員は経験年数を蓄積しても、キャリア志向が明確になるわけではない実態が明らかになったが、若手社員のキャリア志向に影響を与える要素はあるのか。
「上司は、あなたのキャリアの希望や今後の成長について、相談に乗ったり、アドバイスをくれたりしていますか」という質問を行い、キャリア志向との関係を分析したところ、「マネジメントを行いチームを統率したい(管理職)」「スペシャリストとして専門領域を極めたい(専門職)」とも、上司からのサポートについて「はい」と回答した若手に占める割合が最も高く、それぞれ23.2%、33.4%だった。管理職志向と専門職志向の回答割合は、上司からのサポートの度合いによって高まり、上司からのサポートの度合いが低くなるほど、未定・キャリア志向なしの割合が高まった。
6. 会社のキャリア形成支援、適切だと「感じる」割合は年数が上がるにつれて低下傾向
さらに、会社からのキャリア形成支援の状況について調べた。「今の会社は、社員のキャリア形成や成長に対して、適切な支援を行っていると感じますか」という質問に対する回答を社会人歴別で比較したところ、会社からの支援が適切だと「感じる」回答割合は、社会人歴が上がるにつれて低下傾向が見られ、社会人1年目社員では21.5%だったが、社会人4年目社員では1割を切った。
7. 会社からの適切なキャリア形成支援、「感じる」若手社員の勤続意向割合は「感じない」の6倍以上
加えて、会社からのキャリア形成支援の有無と勤続意向の関係性について尋ねた結果、会社からの適切なキャリア支援を「感じる」と答えた若手社員は、勤務先企業で働き続けたいと「思う」と回答した割合が59.7%となった。「どちらかといえば思う」が27.9%で、計87.6%が働き続けたい意向を示した。
一方、会社からの適切な支援を「感じない」と答えた若手社員は、勤務先企業で働き続けたいと「思わない」が57.2%、「どちらかといえば思わない」が27.8%と将来的な離職リスクが高いことが分かった。
同社は今回の調査を踏まえ、若手社員の定着・成長促すカギについて、以下のように述べている。
「本調査では、若手社員の「企業からの成長・キャリア形成の支援の実感度合い」と「その企業での勤続意向」に相関関係がみられることがわかりました。企業から適切な支援があると感じる若手社員の6割近くがその企業で働き続けたいと考えている一方で、企業から適切な支援がないと感じる若手社員の6割近くがその企業で働き続けたいとは思わないという、対極的な結果となりました。
また、『今任されている仕事は、自身の成長につながっていると感じますか』という質問に対し『感じる』『やや感じる』と回答した割合は、社会人1年目社員では6割以上のところ、社会人4年目社員が5割以下となり、社会人歴が上がるにつれて低下する結果となりました。
若手社員は、入社当時はどの仕事も新鮮に思え、自身の成長を実感する機会が多くあります。しかし、入社年月が経つと、仕事に慣れマンネリ感を抱くようになり、社外の環境が良く思えて離職を考え始める若手社員も少なくありません。
若手社員が現在の企業で成長を感じ、将来的にどのように活躍したいかを考えるには、『働き続けることで得られる価値』への期待を企業や上司が醸成することが重要です」
そのうえで、取り組み例として下記を挙げた。
取り組み例
- 上司からの、若手社員の部下一人ひとりに対する期待の伝達
- 若手社員の中長期的な成長を見据えた育成計画の策定
- 若手社員にとって適度にストレッチな経験となる業務(背伸び業務)のアサイン
- 将来どのような活躍の道があるかの紹介
- 家庭環境の変化など柔軟な働き方に対応できる制度の整備
調査概要
- 調査対象者:社会人1~4年目の就労者
- 調査時期:2025年8月1~27日
- 調査方法:調査会社によるインターネット調査
- サンプル数:1793人(社会人1年目335人、2年目405人、3年目523人、4年目530人)
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