働く社員の「本当」に知るべき本音とは
「最近の社員は、何を考えているのか分からない」
人事担当者やマネージャーの方から、そんな声を聞く機会が増えました。社員のエンゲージメント低下、転職率の上昇、そして「静かな退職」という新しい働き方の台頭。これらは、会社の存続と成長を願う経営層や人事にとって、無視できない大きな課題です。
かつて、多くの日本企業が採用していた年功序列や終身雇用制度は、社員に長期的な安定とキャリアパスを保証するものでした。しかし、時代は大きく変わり、現在は個人の能力や成果がより重視されるジョブ型雇用への移行が進んでいます。
このような変化の中で、社員たちは何を考え、仕事に対してどのような価値観を持っているのでしょうか。
リクルートマネジメントソリューションズが実施した「働く人の本音調査2025」の第1回レポート「あなたは、どんな評価や組織風土なら年収に満足しますか?―20代と30~50代の違いと共通点―」によると、20代の社員は、自分の頑張りや成果が目に見える形で評価されることをより望んでいることが分かります。自分自身の成長や努力が、報酬やキャリアアップに反映される実感を求めているのです。
また、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」も絡めて考察すると、さらに興味深い事実が浮かび上がってきました。
調査によると、約8割の社員が「自律的・主体的なキャリア形成をしたい」と考えています。この結果だけを見れば、社員は自身のキャリアに前向きで、積極的に成長したいと考えているように見えます。
しかしその一方で、「自律的・主体的なキャリア形成を求められることに、ストレスや息苦しさを感じる」と答えた社員も64.8%に上りました。
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これは、どういうことなのでしょうか。
社員は、成長したいという意欲は持ちつつも、「自律的にキャリアを考えて」とただ言われるだけでは、どうすればよいのか分からず、かえってプレッシャーを感じている状態にあるといえます。このストレスや息苦しさが蓄積すると、社員はそれぞれに合った形を模索するようになります。
たとえば、より良い環境を求めて転職を検討する人もいれば、副業で自分らしい働き方を模索する人もいます。また、自分の生活を優先するために「静かな退職」のように必要以上の負荷を避け、契約上の業務に専念する働き方を選ぶ人もいるでしょう。会社に求められる役割と、自分自身のキャリアビジョンが必ずしも一致するとは限らないため、「会社のため」という大義名分の下、自分の思いとは違う方向へ進まなければならないのではないか、という不安や息苦しさを感じている可能性もあります。

