人事の現場でも、生成AIの活用が急速に広がっています。しかし、「業務の質が変わった」と実感している人事はそれほど多くないのではないでしょうか。なぜ、AIを導入したのに、業務プロセスは大きく変わらないのか。どうすれば、AIで人事業務の質を高めることができるのか。前編となる本稿では、Works Human Intelligence(以下、WHI)の調査結果をもとに、AI活用を阻む人事業務の構造を読み解きます。
人事の約8割が「業務時間が定型業務で占められている」
生成AIの活用は急速に広がっています。しかし、人事の現場で「業務の質が変わった」と実感している組織は、決して多くありません。
給与処理や人事手続き、評価業務では、いまも表計算ソフトでの加工やデータ転記、関係部署との確認といった作業が日常的に発生しています。AIは導入されたものの、業務プロセスそのものは大きく変わっていない——これが多くの人事担当者の実感ではないでしょうか。
なぜ、このようなギャップが生まれるのでしょうか。
WHIが人事担当者向けに実施した調査では、約8割が「業務時間の半数は定型・オペレーション業務で占められている」と感じていることが分かりました。
ここでいう定型・オペレーション業務とは、「データ入力・集計・チェック」「各種手続き」「定例的な問い合わせ対応」など、日常的に発生する運用業務を指します。
人事部門は、制度設計や人材戦略を担う存在として語られがちです。しかし実際には、業務時間の半分近くがこうしたオペレーション業務に充てられているようです。
「データ処理」が非定型業務へのシフトを阻んでいる
さらに調査では、回答者の約6割が「定型・オペレーション業務から脱却し、企画や再構築といった非定型業務へシフトしたい」と考えていることも明らかになりました。
多くの人事担当者が、制度設計や組織開発など、より企画的な業務に時間を使いたいと考えていることが分かります。
オペレーション業務から非定型業務への移行を妨げている要因とは何なのでしょうか。調査によると、「データ処理」に関する業務が阻害要因であることが見えてきました。「データの収集・入力」「データの加工・集計」といった手作業が非定型業務へのシフトを阻む要因として上位に挙がったのです。
「データの収集・入力」「データの加工・集計」とは、たとえば次のような作業です。
- 各部署からの情報回収
- ファイルの統合
- フォーマット変換
- データチェック
人事業務の多くは、「データを集める→ 加工する→ 確認する」というプロセスで構成されています。これまでの調査結果から、人事業務のボトルネックは、意思決定の段階ではなく、その前段階のデータ処理にあるといえそうです。
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袋瀬 淳(フクロセ ジュン)
株式会社Works Human Intelligence/WHI総研
大手不動産会社にて企業の寮や社宅の運用支援を通じた業務改革に従事後、Works Human Intelligence入社。保守コンサルタントを経て、多くの企業を見てきた経験を活かし...
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