AI導入への期待と現実——生成AIへの懸念とは
こうした背景から、AIによる効率化への期待が高まるのは自然な流れです。
調査でも管理職の約6割が、部署内の定型業務の「4割以上」を生成AIで代替・自動化できると認識しているという結果が出ています。つまり現場では、AIによる業務改善への期待は決して小さくありません。
しかし実際には、AIが業務の中心に組み込まれているケースはまだ限定的です。
その理由の1つが、AIへの不安です。生成AI活用における最大の懸念として「想定外の動作や誤った処理を行うことへの不信感」が調査で挙げられました。次いで、「入力した人事データや機密情報が社外へ漏洩することへの懸念」も高い割合を占めています。
給与計算や労務手続きなど、人事業務には1つのミスも許されない領域が少なくありません。一方でAIは、極めて優秀ですが「確率的にたまに間違える」という性質を持っています。
「中身が見えないAIに丸投げして、もし間違っていたときに誰が責任を取るのか」。こうしたブラックボックス化への恐怖があるため、AIの出力を完全に信頼できず、最終確認は人が行う必要があります。
その結果、AIを導入してもプロセス全体は変わらず、すべての工程において「人が最後にチェックする構造」が維持されてしまい、AIを導入したもののあまり業務効率化ができないという状況になるのです。
AIが入り込めない複雑な「業務プロセス」
さらに、人事業務にはAIを導入しづらくするもう1つの特徴があります。業務の多くが、複数のシステムや工程をまたぐ連携作業で構成されているという点です。
たとえば給与処理では、次のような工程が存在します。
- 対象者抽出
- 勤怠データ取得
- 表計算ソフト加工
- システム入力
- 結果確認
- 関係部署共有
このように、人事業務は単独の処理ではなく、複数の工程が連携する「業務プロセス」として成立しているのです。
AIがこの工程の一部の作業を効率化できたとしても、プロセス全体が変わらなければ、仕事の進め方そのものは大きく変わりません。
では、この構造の中でAIはどのように活用されていくのでしょうか。後編では、人事業務におけるAIとの理想的な協働モデルについて考えていきます。

