人的資本経営の第一歩ともいえる“従業員サーベイ”。導入企業は多いものの、離職改善や組織の実行力向上といった成果が表れるほど、サーベイの結果を活かしきれている企業はどれほどあるだろうか。「測って終わりのサーベイは、従業員満足度を30.5%低下させることが分かっている。やりっぱなしになるくらいなら、導入しないほうがいい」と語るのは、イベント「HRzine Day 2026 Summer」に登壇した株式会社ビットエー ourlyカンパニーの乗松諒氏だ。なぜ多くのサーベイは形骸化してしまう理由や、サーベイを機能させるために外せない3つの条件などを紹介した。
やりっぱなしのサーベイが離職を加速させる
冒頭、乗松氏は「サーベイを導入して『組織が良くなった』と本当に言い切れますか?」と問いかけた。即座に「はい」と答えられず、次の4つのどれかに当てはまるのであれば、そのサーベイはむしろ行わないほうがよいと指摘する。
- スコアが一部の経営陣にしか開示されていない
- 現場の社員に結果が開示されていない
- スコアが前回から改善していない
- 経営者・管理職がサーベイの結果を見ても、何のアクションもしない
「サーベイに答えたところで、どうせ何も変わらない」と従業員に思われてしまうと、当然、次の回答率は下がる。それだけで済めばまだよいが、「せっかくSOSを出したのに、結局会社は何の対処もしてくれない」という失望につながれば、離職が脳裏にちらつくようになるのも致し方ないだろう。
乗松 諒(のりまつ りょう)氏
株式会社ビットエー ourlyカンパニー 執行役員
2022年、ourly創業1ヵ月目にセールスとして参画。以降4年間で、約1500社の組織改革や社内コミュニケーション活性化、エンゲージメント向上施策を提案。前職の経験を活かし、製造業界を中心に担当しながら、コンサルティングセールス全体を統括。2024年2月より執行役員に就任。
スタメン社の「組織サーベイに関する調査」によると、「やりっぱなしのサーベイは、従業員満足度を30.5%低下させる」ことが判明している。組織を良くするためにサーベイを実施しているはずなのに、かえって従業員の離職を加速させてしまっているかもしれないのだ。
離職に至るまでには複雑な経路があり、どの経路をたどっているのかを外から判別することは難しい。さらに、エン社の「本当の退職理由」調査によると、退職時に「会社に伝えなかった本当の理由がある」と答えた人は54%に上るという。今後の離職対策に活かすために問題を特定したくても、本音を言ってもらえなくては、手の打ちようがないだろう。
そこで乗松氏は、「なぜ人は“辞めてしまう”のか?」ではなく、「なぜ人は“辞めない”のか?」にフォーカスすべきだと強調する。従業員が組織に長く定着している理由を理解して、そこをどんどん強化する。「辞める理由」をつぶすのではなく、「定着する理由」を育てようという発想に転換するのだ。
ここで活用できるのが「ジョブ・エンベッドネス(Job Embeddedness)」という2001年に経営学者のテリー・ミッチェルらによって提唱された組織心理学の概念である。「従業員がどれだけ組織に埋め込まれているか」を次の3つの要素で説明する。
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- Links(リンクス:絆・ネットワーク)
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- 人と組織や組織外の人々との間にあるつながり
- 職場内での同僚や上司との人間関係、部門間での協力関係
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- Fit(フィット:適応・カルチャー)
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- 従業員の価値観やスキル、キャリア的な目標が、組織やそこで行う職務にどれほど合っているか
- 従業員が組織やその職務に適していると感じると、組織に対する愛着が強まり、その結果として長期的な定着につながる
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- Sacrifice(サクリファイス:犠牲)
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- 従業員が組織を辞めることによって失うもの
- 収入や福利厚生、昇進の機会、興味のあるプロジェクトの喪失
ただし、待遇を良くして「Sacrifice」で従業員を縛っても、エンゲージメントはなかなか上がらない。「“本当は辞めたいけれど”犠牲を払いたくないから辞められない」という後ろ向きな人を増やすだけだからだ。
そうなると、前向きな定着のために強化すべきは、「Links」と「Fit」であると分かる。つまり、離職改善のためには、「サーベイでしか見えない本音」を可視化して、効果検証を行い、LinksとFitを強化するための改善策を立案・実行すればよいのである。
「サーベイは皆さんが毎年受けている健康診断と同じです。健康診断で体内を測定しただけでは、病気は治りませんよね。健康診断で悪いところが見つかれば、真因を特定して、生活習慣を見直したり、病院で治療を受けたりするはずです。同様に、サーベイで離職につながりそうな異変を見つけたら、真因を特定して解消を目指していく。そして、再びサーベイで、健全な状態に近づいているかをチェックする。このサイクルを回していくことが重要なのです」(乗松氏)
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- この記事の著者
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野本 纏花(ノモト マドカ)
フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・セルフブランディ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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丸毛 透(マルモ トオル)
インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。
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提供:株式会社ビットエー ourlyカンパニー
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