パーソルイノベーションは、同社が運営する副業人材マッチングサービス「lotsful」にて、キャリア自律と上司と部下のコミュニケーションに関する実態調査を実施した。
コロナ禍を経ても「コミュニケーション頻度は変わらない」が最多
回答者全体にコロナ禍以降の上司と部下の1on1などのコミュニケーション頻度の変化について尋ねたところ、「特に変わっていない」(43.6%)が最多となり、コロナ禍を経ても対話頻度に大きな変化は見られなかった。
一方で、「やや増えた」(19.7%)と回答した人の多くはフルリモート勤務者であり、リモート環境下でもチームの一体感を保つために、意識的にコミュニケーションを増やす動きが広がっていることが分かる。
上司と部下の間で直近1年に最も多く交わされた会話テーマを尋ねたところ、「業務進捗・タスク管理」(27.8%)や「人事評価・目標設定」(25.5%)が上位となり、「特にない/覚えていない」(31.2%)を除くと、日常のコミュニケーションの多くが「業務中心」であることが分かる。
また、上司側に、部下のキャリア支援として行っていることを尋ねたところ、「評価や目標設定に基づいたアドバイス」(36.4%)や「定期的なキャリア面談」(34.0%)が多く、人事制度に基づくフォーマルな場での支援にとどまる傾向が見られた。
一方、部下側に、上司とのコミュニケーションでキャリアや将来について話す機会はどの程度あるかを尋ねたところ、「全くない」(26.9%)、「ほとんどない」(23.4%)と回答した人が過半数の50.3%を占め、「キャリアにおける対話に空白」が存在することが明らかになった。また、上司とのコミュニケーションが自身のキャリアに与える影響についても、「キャリア選択にはあまり影響していない」と答えた人が52.7%で最多となり、業務上の報告や評価のやり取りはあっても、キャリアの方向性や将来像を共に考える「対話の場」が不足しており、上司の関与がキャリア形成に十分に活かされていない実態が浮き彫りとなった。
上司は「本音を引き出せない」、部下は「話す機会がない」
キャリアに関するコミュニケーションで難しさを感じる点を尋ねたところ、上司の回答では「部下の本音を引き出しづらい」(35.6%)が最多となり、次いで「世代間・価値観のギャップ」(31.6%)が続いた。
一方、部下側に、上司とのキャリアに関する会話で難しさを感じる点を尋ねたところ、「キャリアについて会話する機会がない」(39.9%)が最も多く、「本音を言うと評価に影響しそう」(17.9%)と答えた人も一定数見られた。
この結果から、上司と部下の間にはコミュニケーション機会が不足しているだけではなく、「話したくても話せない」「聞きたくても聞けない」というギャップが存在し、キャリア対話が十分に機能していない実態が浮き彫りになった。
また、「キャリア自律」という言葉をどう受け止めていかを尋ねたところ、全体では、「あまり関心がない」(32.5%)、「重要だがプレッシャーを感じる」(24.4%)が上位を占め、約6割が必要性を認識しつつも負担感を抱えていることが分かった。
さらに、副業・社外活動を積極的に行っている層の57.6%が「キャリア自律を自分にも取り入れたい」と回答しており、社外経験がキャリア意識を高める可能性が示唆された。
理想の関係は“信頼できる距離感”
今後、上司と部下のキャリアに関するコミュニケーションがどうあってほしいかを尋ねたところ、全体では、「過度に干渉せず、求められた時だけサポートしてほしい」(24.1%)が最も多く、次いで「必要な時に安心して相談できる心理的安全性を高めてほしい」(22.0%)が続いた。
年代・性別で見ると傾向に差があり、20代男性は「定期的な1on1でもっと話したい」(37.5%)が最多、20代女性は「価値観や人生設計についても相談できる関係を望む」(21.7%)が最多となり、若年層では積極的な対話や共感を求める声が目立った。さらに40代では男女とも「過度に干渉せず必要な時にだけサポートしてほしい」(男性29.7%、女性24.7%)が最多となり、年代が上がるほど、適度な距離感を保ちながら支援してほしいという意識が強いことが分かった。これらの結果から、キャリア支援では「距離の近さ」よりも「信頼できる距離感」が重要であり、一方的な管理ではなく、必要なときに安心して相談できる「支援型マネジメント」が求められていることがうかがえる。
なお、同調査の概要は次のとおり。
- 調査手法:インターネット調査(Fastask)
- 調査対象:全国の企業に勤める会社員 20~40代の男女
- 調査期間:2025年10月2~3日
- 対象人数:660人
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