組織的な不正保険料要求、意図的な資金循環による粉飾会計——。組織は健全であることが望ましいものの、時に硬直化し、場合によっては腐敗してしまう。それはなぜなのか。シンプルな数理モデルと平易な解説で、その動学的なメカニズムを見ていきます。
健康な組織と腐敗する組織
組織はなぜ腐敗するのか。このシンプルな問いを考え続けて10年以上経ちますが、その原因の特定は簡単ではありません。
何が悪いのか。人か、組織か、あるいは経営なのか会計などの社会制度か。これはいろいろあり得て、組織によってケースバイケースでしょう。真因だと思ったら、その奥にまたそれを引き起こしていた原因がある、ということもあるでしょう。また、原因は個別の主体ではなく、関係性からきている場合もあります。どちらも悪くないが関係性が良くないがゆえに誤解を誘発してしまう、ということはよくあるでしょう。
このようにさまざまに原因を考えることはできますが、一方でとりとめがない気持ちにもなってきます。
ただ、1つだけ重要なことはいえます。組織の硬直化と腐敗化は、時間を経るごとに進むのではないか、ということです。
時間とともに組織は硬直化していくという原理
さまざまな要因はあるとして、組織は時間を経ると硬直化が進む——。その観察が正しいとしたら、それはどのように進んでいくのでしょうか。徐々にじわじわとでしょうか、時々ジャンプするのでしょうか、それとも堰を切ったようにでしょうか。
私は理論で補助線を引くのが仕事ですが、それらはすべてあり得ます。ただ、非常に強い確信を持ってこう言いたいと思います。「硬直化は重力のように作用を受け、進行する傾向がある」と。
組織の硬直化は“重力”のように進む
組織の健全性という指標がもしあったとします。これはパラメータを細かく想定もできますが、まずは総量だと思ってください。
組織の硬直化やそれによる腐敗化は、それが失われていくことです。
また、「重力のように進行する傾向がある」とは、時間とともに加速していくことを示します。均等に進行することもありますが、それは無重力状態だということで、重力の働きに含めることができます。
もちろん、何らかのショックがあった場合、一気に進むことはあるでしょう。また、表面化には時間がかかる場合もあります。見た目で突然起きたと思ってしまうこともあるでしょう。
ただ、それらを捨象した自然状態としては、刻々と硬直化が進んでいく。これを意識すると、組織の把握と打ち手の認識がガラリと変わります。
組織の硬直化は宿命という認識の転換
組織の硬直化(以下、組織硬直化)の原因はさまざまでしょう。原因の元もその作用も複雑です。いろいろな可能性があり得て、大変な組み合わせでの相関関係があり得ます。
それを見つけ出して取り除けば解決する。それは正しいです。ただそれが現実的に全うできるでしょうか。
目の前の望ましくない事象も、原因なのか結果なのかすら分かりません。それでも何とかしようと努力し、打ち手を考えるでしょう。
であれば、あらゆる原因が考えられるとして、まずは組織の“老化”であると、しかも加速度的に進行する病なのだと仮に考えましょう。そう捉えると、組織硬直化は避けられない宿命ではあるが、それに抗うことはできるのではないか、という発想の転換が訪れます。
もちろん、目の前のトラブルや明白な原因は除去するべきです。ただそれでよい、というふうにはならなくなるでしょう。
原因を取り除けば健全になってそれが常態である、というのは常識的ですが誤りで、組織は本来的に老化するものだという発想になるならば、アンチエイジングとしての打ち手こそ、必要なのではないかという帰結に至ります。
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- この記事の著者
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佐々木 一寿(ササキ カズトシ)
経済評論家、作家。大手メディアグループ経済系・報道系記者/編集者、ビジネススクール研究員/出版局編集委員、民間企業研究所にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『KPIマネジメント』(日本経済新聞出版)など。コラムも多数。
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