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人事にまつわる学術的なエトセトラ | #6

「メンタルモデル」は変えられるのか——制御焦点理論から適材適所の打ち手を考える


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 「適職」「適材適所」は時代を問わず常に問い続けられているテーマですが、仕事へのモチベーションを生じさせ維持するメンタルモデルに関しては、比較的最近に有用な理論と検証が出てきています。前回に引き続き、制御焦点理論の観点から、メンタルモデルの重要性と職務フィットの考え方を学んでいきます。

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モチベーションの「質の違い」の重要性

 前回(第5回「『モチベーション』をどう考えればよいか」)では、モチベーションの持ち方に質的な違いがあること、そしてその違いが行動やパフォーマンス、ケアの方法に影響することをヒギンズの制御焦点理論(regulatory focus theory)[1]の観点から確認しました。

[1]: E. Tory Higgins,“Beyond Pleasure and Pain”, 1997

 少しおさらいをすると、制御焦点理論の制御(regulatory)とは自身が自身を律することを意味し、焦点(focus)とは(2つの異なる)性質のどちらに準拠するか、ということを表します。つまり、人々が目標を追求する際に「どのように自身を律して行うか」という包括的な説明だと思っていただければ、とりあえずよいと思います。

 この2つの制御焦点を、職場で仕事をするビジネスパーソンの文脈で私なりに整理すると以下になります。

2つの制御焦点

促進焦点(Promotion Focus)
  • 自分が考える理想や願望、いっそうの向上に焦点を当てる
  • 良い成果の獲得、達成を重視する
  • 探索的でリスクをとることをいとわない
  • 成功への期待が動機付けとなる
予防焦点(Prevention Focus)
  • 守るべき義務や責任、安全性に焦点を当てる
  • 損失の回避を重視する
  • 慎重で規範的な行動をとる
  • 失敗の回避が動機付けとなる

 これらは優劣ではなく、その個人がどちらを強く持っているかという観点で見ますが、たとえば個人の職務フィットに影響する可能性を考えることができます。

 概して、研究開発や創作のような職務は促進焦点的な傾向と親和性が高く、事務処理や運用管理のような職務は予防焦点的な傾向と相性が良いと思います。

 またチームではどうか、事業フェーズで必要とされるのはどちらか、といった考察を行うことができます。

 もちろん、私たちの仕事には全体としては両方が必要なことがほとんどだと思います。ただ、職種の性質や置かれた状況によってはどちらかがより重要となることもあります。そのときに個人の制御焦点がフィットしている場合とフィットしていない場合では、パフォーマンスやメンタルヘルスに違いが出てくることは想像に難くないでしょう。特に難局を切り抜けられるかどうかといった切迫した状況においては、非常に大きなファクターになり得ます。

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この記事の著者

佐々木 一寿(ササキ カズトシ)

経済評論家、作家。大手メディアグループ経済系・報道系記者/編集者、ビジネススクール研究員/出版局編集委員、民間企業研究所にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『KPIマネジメント』(日本経済新聞出版)など。コラムも多数。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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