モチベーション論は古くて新しい論点
古今東西、古典哲学や軍学でも扱われるいわゆる「モチベーション」は、現代の仕事をする私たちであってもよく取り上げられるテーマです。
巷間の書籍でも「高いモチベーションを保ちましょう」「低ければ高めましょう」とよくアドバイスされています。モチベーションはあるに越したことはない。それはそうだとして、ただそれほど単純な話で済むものでもないようなのです。
モチベーションはないよりもあったほうがよい、というのは「量」的な視点です。しかし、その「質」はどうなのでしょうか。この問題に気づいた研究者がいます。
コロンビア大学の心理学者E・トリー・ヒギンズがその人で、彼が1997年に論文[1]で提唱した「制御焦点理論」では「動機」に関する異なる2つの質の違いを論じています。
制御焦点理論は“Regulatory Focus Theory”の日本語訳ですが、そのままだと少し分かりにくいので説明すると、「制御(regulatory)」とは自身が自身を律することを意味し、「焦点(focus)」とは(2つの異なる)性質のどちらに準拠するか、ということを表します。つまり、人々が目標を追求する際に「どのように自身を律して行うか」という包括的な説明だと思っていただければ、とりあえずよいと思います。
注
[1]: E. Tory Higgins, “Beyond Pleasure and Pain”, 1997。ヒギンズの論文の発表以降、多くの研究者が制御焦点理論についての検証を行っている。