プロフェッショナルバンクのHR研究所は、平均年収が近い500万円前後の各業界で働く30〜34歳の正社員を対象に、「新卒3年未満の転職とキャリア形成への影響」に関する調査を行った。
30代前半の年収分布に大きな差は見られず、転職未経験者のほうがわずかに高年収帯に分布
現在の年収帯について聞いたところ、新卒入社から3年未満で転職経験がある人は「400万~500万円未満」と回答した人が24.3%で最も多く、「300万~400万円未満」が21.6%、「500万~600万円未満」が19.6%と続いた。
一方、転職経験がない人では、「400万~500万円未満」が25.4%で最多となり、「500万~600万円未満」が21.6%、「600万~700万円未満」が14.9%と続いた。
両者ともに「400万~500万円未満」が最も多い結果となった。しかし、転職経験がある層では「300万~400万円未満」の割合が転職未経験層と比べて多い結果となり、一方で転職未経験者は「600万~700万円未満」の割合が転職経験層と比べて多いことが分かる。
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管理職比率は転職経験者が高めに分布、転職がキャリア加速の一因となっている可能性を示唆
現在の役職について質問したところ、転職経験がある人では、「一般社員」が64.6%で最多となり、「係長・主任クラス」が22.6%、「課長クラス」が6.5%と続いた。
一方、転職経験がない人では「一般社員」が70.2%で最も多く、「係長・主任クラス」が24.9%、「課長クラス」が4.0%と続いた。
ともに「一般社員」が過半数を占めているが、転職経験者のほうが管理職比率はやや高いことが分かる。特に「部長クラス」「事業部長・本部長クラス」「経営者・役員クラス」のハイレイヤー割合については、転職未経験者は0.9%にとどまるのに対し、転職経験者は6.3%と大きな差が見られた。
このような結果から、転職によって昇進機会を得る、あるいは即戦力として採用されるといった明らかな環境変化が影響していると考えられる。逆に、転職未経験者は社内での昇進ペースが比較的ゆるやかであり、年次や在籍期間を重ねて昇格するケースが多いと推察できるという。
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現在のキャリア満足度、転職経験者は約7割、転職未経験者は6割が肯定的
現在のキャリアの満足度について質問すると、転職経験がある人は「やや満足している」が54.3%で半数を超え、次いで「あまり満足していない」が25.7%、「大変満足している」が12.9%、「まったく満足していない」が7.1%と続いた。
一方で、転職経験がない人は「やや満足している」が52.1%で半数を超え、続いて「あまり満足していない」が31.9%、「大変満足している」が8.7%、「まったく満足していない」が7.3%という結果になった。
「大変満足している」と「やや満足している」を合わせた「キャリア満足度」を見ると、転職経験者の約7割、転職未経験者の6割が肯定的な評価を示した。転職を経験した層のほうがやや満足度が高い傾向にあることがうかがえる。特に「大変満足している」の回答割合に差が見られ、転職によって自身の希望や強みをより活かせる環境へと移行できた結果と考えられる。
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転職未経験者の転職に対する意識は「不安」と「希望」が交錯
転職経験がない人に対し、転職をどのように捉えているか」について調査したところ、最も多かったのは「不安やリスクがある」が25.6%で、次いで「収入アップの可能性」が17.8%、「興味がない」が14.0%と続いた。
転職未経験者が転職しない理由は「面倒」と「現職満足」が拮抗
転職経験がない人に対し、転職をしたことがない理由について調査すると、最多は「転職活動が面倒に感じる」が27.0%で、次いで「現職に満足している」が24.7%、「転職がリスクだと考えている」が17.8%となった。
「現職に満足している」という回答は約4人に1人にとどまり、「転職活動が面倒」「リスクがある」といった心理的・行動的ハードルが大きいことが分かる。また、「家族や生活環境」といった外的要因も一定数存在し、転職を自分の意思だけで決められない層の存在も浮き彫りになった。
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また、将来的に転職をしてみたいと思うか質問したところ、「今はしたいと思わない」と46.5%が回答した。この結果から、多くの人が現状の職場や仕事にある程度満足していることがうかがえる。
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転職経験者の転職理由は「給与」「労働時間」「休日・休暇」の待遇面に集中
転職経験がある人に対し、新卒で入社して3年未満で転職した理由について聞くと、「給与が低い」が39.6%で最も多く、次いで「労働時間が長い」が27.9%、「休日・休暇が少ない」が25.7%、「仕事内容が合わない」が25.2%と続いた。
転職理由の上位には待遇面と業務内容のミスマッチが集中しており、若手社員が職場に求める最低条件が満たされていないケースが多かったことがうかがえる。
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転職経験者の「転職」における自己評価は、約9割が「良かった」と肯定
転職経験がある人に対し、転職したことについて今どう思うか質問したところ、「まあ良かった」が54.8%で半数を超え、「とても良かった」が33.5%、「あまり良くなかった」が9.1%、「後悔している」が2.6%と続いた。「とても良かった」と「まあ良かった」のポジティブな意見を合わせると、約9割が転職したことを肯定的に評価していることが分かる。
さらに、転職を通じて結果的に得られたことについて聞くと、最も多かったのは「働きやすさの向上」が39.2%で、職場環境や勤務制度、対人関係などの総合的な改善が求められていることが示された。次いで、「年収の増加」が33.1%、「新しいスキルの習得」が26.1%と続き、転職が条件改善やキャリア形成に実質的な効果をもたらしたことがうかがえる。
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理想の転職回数、転職未経験者は「生涯転職しない」が過半数、転職経験者は「2社経験」が理想
全対象者に対して、生涯を通しての経験社数(転職回数)の理想を聞いたところ、新卒で入社して3年未満で転職した経験がある人では、「2社(転職1回)」が38.2%で最多となり、次いで「3社(転職2回)」が33.9%、「1社(転職しない)」が14.8%と続いた。
一方、転職経験がない人では、「1社(転職しない)」が56.6%で最も多く、次いで「2社(転職1回)」が28.3%、「3社(転職2回)」が13.6%と続いた。
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なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査期間:2025年7月12~15日
- 調査方法:PRIZMAによるインターネット調査
- 調査人数:954人
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調査対象:調査回答時に30代前半の平均年収が500万円前後の業界で働く正社員
- 新卒で入社して3年未満で転職した経験のある人:505名(転職回数:最大2回まで(新卒入社から3年までの間に1回、以降は0回もしくは1回の転職のみ))
- 転職経験がない人:449名
- 対象業界:IT・情報通信、製造、建設、教育・学習支援、不動産・物品賃貸、運輸・郵便
- 調査元:プロフェッショナルバンク
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