「従業員エンゲージメント」という言葉が一般化したが……
こんな課題はありませんか?
- 従業員エンゲージメント調査を毎年実施しているが、お金と労力をかけている割に効果実感がなく、単なる年間行事になっている
- 従業員エンゲージメントスコア向上が経営指標にも良い影響を与えるなど、取り組みの重要性を管理職に伝えているが、他人事感があり改善活動に本気にならない
- 従業員エンゲージメント調査結果を経営会議で報告するようになったが、総合スコアの高低やベンチマーク比較ばかりが注目され、従業員からの具体的な声には興味が薄い
10年くらい前は、「従業員エンゲージメントとは何か」「従業員エンゲージメントを向上するとどんな良いことがあるのか」といった話をすることが多かったのですが、人的資本経営やESG重視トレンドのおかげで、今では「従業員エンゲージメント」という言葉が普通に使われるようになりました。従業員エンゲージメント調査に取り組みはじめる企業、隔年実施から年次実施に切り替えるなど実施頻度を上げる企業、調査結果を経営会議で報告するなど経営アジェンダに含める企業も増えています。
また、高い従業員エンゲージメントは財務・非財務の各種経営指標にプラスのインパクトがあるという考えも浸透してきており、従業員エンゲージメントは重要ということが当たり前のようにいわれるようになってきました。
(以降、本稿では「従業員エンゲージメント」「従業員エンゲージメント調査」は、「エンゲージメント」「エンゲージメント調査」と表記します)
このような考えが浸透してくると新たな課題が出てきます。エンゲージメントをどう改善または維持したらよいのかということです。そもそも、何をもってエンゲージメントの改善と見ればよいのでしょうか。
従業員エンゲージメントの「改善」の意味するところ
エンゲージメント調査を行う場合、一般的に次のような方法がとられます。
- 組織・人材領域を専門とするコンサルティングファームに委託
- SaaSベンダーが提供するエンゲージメント調査サービスを利用
- 自社の完全オリジナル調査をアンケートツールなどで実施
エンゲージメントスコアの根拠となる設問やスコア算出方法はさまざまですし、外部のフレームワークや標準設問集を利用すると市場ベンチマーク比較ができるといったことはありますが、どの方法であっても定量的なスコア算出をするということがほぼ共通しています。
また、人的資本経営の取り組みに力を入れている企業の多くは、当該スコアや改善目標値を外部公開しています。社内において役員報酬や上司の評価にエンゲージメントスコアを組み込む例もあり、エンゲージメントの改善とはスコアそのものの改善を意味していることがあります。
しかし、エンゲージメント調査の本来の目的は、会社や組織の状態、従業員が会社に対して思っていることを知り、組織パフォーマンスや従業員リテンションの向上につなげることのはずです。「会社・組織の健康診断」といわれることもあります。このような視点では、エンゲージメントの改善とはスコアの改善ではなく、働く環境や社内コミュニケーションの改善を意味します。
この点を深く理解していただくため、まずは高いスコアを取ることを最重視する「スコア重視型」の取り組みについて解説します。

