経営戦略と人材戦略の連動、「VISION2030」に向けた取り組み
三井化学は、連結売上高約2兆円、従業員数約2万人を擁するグローバル企業だ。国内外に165のグループ会社を持ち、海外売上高比率は約50%に達する。
同社は1912年の創業以来、石炭化学からスタートし、現在はライフ&ヘルスケア、モビリティ、ICT、ベーシック&グリーンマテリアルズの4領域を展開。近年はESGを軸に、CO2排出削減や環境負荷低減、プラスチックごみ問題などの課題解決に取り組んでいる。
「この10年でグローバル化が加速しました。2011年時点では海外従業員比率が24%でしたが、2023年には約40%に。M&Aを通じて欧州やアジアに多くの拠点を展開し、海外市場への進出を強化しています」(小野氏)

小野 真吾(おの しんご)氏
三井化学株式会社 グローバル人材部 部長(2025年2月時点)
三井化学株式会社にて、ICT関連事業の海外営業・マーケおよびプロマネジャーを経験後、人事に異動。組合対応、採用責任者、国内外M&A人事責任者、HRBPを経験後、人材戦略、キータレントマネジメント、後継者計画、グローバル人事システム導入、グローバルポリシー推進、HRトランスフォーメーション等に従事。2021年4月よりグローバル人材部長に就任し、グローバルレベルでHR機能の強化および指名・役員報酬制度、企業文化変革にも着手。 課外活動として、副業起業を16年前にスタートし、現在企業コンサルやHR人材育成、キャリア開発、セミナー、パネル、大学院での講義やコミュニティ運営などにも従事。経産省ISO/TC国内審議会委員、経産省CX研究会委員も応嘱。
こうした急速な変化に対応し、長期的な成長戦略を描くために2022年に策定されたのが「VISION 2030」だ。

三井化学は、自社の存在意義である「社会課題解決」に立ち返り、「ソリューション型事業モデル」への転換を掲げた。「VISION 2030」の策定から今日まで、従来の顧客ニーズに応える素材提供だけでなく、社会課題を見据えた新規事業の創出やM&Aを活用した成長戦略、さらにはDXを駆使したビジネスモデルの変革を推進している。

非財務指標は、企業の本質的な成長を測る物差し
同社が特徴的なのは、財務指標と非財務指標を統合的に管理し、経営の意思決定に活用している点だ。
「財務指標に加え、非財務指標を重視することで、持続的な企業価値の向上を目指しています。環境変化により財務指標は変動しますが、非財務指標は企業の本質的な成長を測る物差しとなるのです」(小野氏)

その中でも人材戦略は、非財務指標の重要な要素の1つとして位置付けられている。
「人材戦略を語る際には、明確なフレームワークが必要です。私たちは、『人的資本のAs Is』と『To Be像』とのギャップを埋めることを軸に、『人材ポートフォリオの変革』『従業員エンゲージメントの向上』『企業文化の変革』の3つの要素を基に戦略を組み立てています」(小野氏)

経営戦略と連動し、適切な人材育成・配置を行うことで長期的な企業競争力を確保する狙いだ。