第二創業期のjinjer、HR界の過渡期のいま伝えたい人事課題とは
クラウド型人事労務SaaS「ジンジャー」を運営するjinjerは、2021年10月に人材サービスのネオキャリアからスピンアウトする形で創業した。
HR業界は昨今、法改正だけでなく人手不足や人的資本経営の重要性が高まるなど、過渡期を迎えている。そこで同社は「第二創業期」をうたい、この5月に経営陣を刷新。新社長にはシスコシステムズやアマゾン ウェブ サービスといった外資企業を渡り歩き、前職では株式会社Zendeskの社長を務めていた冨永健氏が就任している。
そんな冨永氏が「“正しい”人事データの活用で競争力を高める!グローバルHR SaaSから学ぶ組織戦略の未来」をテーマに、正しい人事データの活用によって競争力を高める方法を解説した。

冨永 健(とみなが けん)氏
jinjer株式会社 代表取締役社長 CEO
シスコシステムズで大手企業向け営業と組織マネジメントを担った後、アマゾン ウェブ サービスで営業責任者として日本のクラウドマイグレーションの加速に貢献。その後、株式会社Zendeskの社長としてカスタマーエクスペリエンス基盤の普及とオペレーション改善を主導し、国内市場でのプレゼンス拡大に寄与した。現在は、HR SaaS企業 jinjerの代表取締役社長 CEOとして、これまで培ったグローバルビジネスの経験を基盤に、戦略策定、M&A・組織再編、業務オペレーションの効率化に取り組み、jinjerの持続的成長をリードしている。
講演の冒頭、冨永氏は「高度経済成長期を中心に、従来の日本企業では人材を大量採用し、とにかく数で勝負してきました。一方、近年は経済が成熟し、人手不足も顕在化しています。これまでのように『量』ではなく『質』に考え方を変え、人材を資本として捉えながらいかに企業活動に活かすかを人事や経営が考え抜く必要が生じています」と話す。
そのうえで必要になるのが、デジタルツールの活用だ。ビジネスを構成するのは「ヒト」「モノ」「カネ」。このうちモノ、カネは比較的システム化が進んできたものの、ヒトは取り残されてきた。
「人間の能力を定量的に計測することは難しく、経験・勘・度胸など根拠のないものを基に評価されがちでした。意思決定も同様にこうした観点でなされることが多かったのではないでしょうか。これでは働き手側に不公平感が生まれてしまいますし、正しい意思決定をしにくくなってしまいます。そこで必要なのが、データ化と分析なのです」(冨永氏)
1人の社員に対して、複数のデータが存在している
人事担当者たちの危機感が薄い点にも、冨永氏は警鐘を鳴らす。
jinjerが実施した調査によると、自社の人事データが整備されていると回答した担当者は半数ほどだった。

しかし次に注目したいことがある。整備できていると回答した人に対して、質問の仕方を変えて「データ入力や更新が現場任せになっていないか」など、データ整備に関する個別具体的な課題を問うたところ、多くが「ある」と回答した。つまり、多くの人事担当者は自社の人事データに関する課題を正しく把握できていないのだ。

こうした事態はなぜ起こるのか。冨永氏は、人事に関するデータが複数のシステムに点在し、全体像を把握しにくくなっている点を挙げる。
「2000年代は人事データといえば職歴や資格など、非常に限られていました。また、管理をオンプレミスのシステムで行っていたはずです。その後、人事に必要な情報はどんどん増えていくのですが、オンプレミスだと新たな機能を追加しにくく、つど新たなシステムを導入しなければいけません。その結果、システム構成が複雑化してしまった企業が多いのではないでしょうか」(冨永氏)
その結果、jinjer調べでは各社の人事が使っているシステムの平均は5つほど。1人の社員に対し、労務システムや給与システムなど、それぞれに別個のデータが存在するようなケースが常態化している。

そうなると、たとえば同じ人物のデータでも、労務システムでは「山田太郎」、給与システムでは「山田 太郎」といった形で、名字と名前の間にスペースがある/なしで別個の人物のように見えてしまう。こうしたトラブルは、大事になる前に人事担当者が手作業で修正していることが多く、経営にまで問題意識が上がっていかないことも隠れた問題だと冨永氏は指摘する。
人事データベースを統合することで生まれるメリット
もちろん、各社はAPIで各システムを連係したり、あるいはCSVでローカルに落とし、それをまた別のシステムで読み込んだりと疑似的に一連のシステムとして扱う工夫を重ねている。しかし、理想はデータベースを1つにすることだ。
「1人の従業員に対し、バラバラにデータを格納するのではなく、あくまで格納するのは1ヵ所にすべきです。そうすることで、年齢や部署が変わったとき、最新の情報に更新しやすくなります」(冨永氏)

実際、グローバルではこうしたワンストップで人事データを管理できるSaaSが当たり前に使われており、冨永氏は「世界的にも、時代的にも、データベースは1つというのがトレンド」と話す。
次に、データベースを1つにまとめるメリットを見ていこう。
まず人事担当者の生産性が上がること。データの誤りや手戻り、手作業による更新などの手間から解放される。「ある年度に入社した女性の比率」「その中で管理職に昇進した比率」など、複数のデータを組み合わせた分析もしやすくなる。
このようなデータを組み合わせた分析を可能にすることで、さまざまな施策も検討しやすくなるだろう。
たとえば、勤怠実績とストレスチェックの結果を重ねて分析するパターンを冨永氏は挙げる。この場合、どの部門がストレスチェックの結果が悪いかを特定したうえで、長時間労働ならば労働時間の削減を、勤怠に大きな変化がなければマネジメントや人間関係に問題があるのではないかなど、仮説を立てたうえで迅速に打ち手を考えられる。

他にも、給与情報や人事評価を重ねれば、高い評価を得ているにもかかわらず賃金が低い人を特定できる。さらに入社年次と組み合わせることで、優秀な若手が流出してしまわないような施策を検討しやすくなるだろう。
重要なのは「正しい人事データ」をしっかり収集すること
ジンジャーでは、このような分析が可能になる統合型のデータベースに加え、そのデータベースを最大限に活かす人事労務やワークフローシステム、タレントマネジメントシステムを提供している。
冨永氏は、もともと同一システム内でデータが連動しておらず、かつ人事担当者が毎月5つのデータベースを数十回にわたり手作業で同期させる手間が課題になっていた企業がジンジャーを導入したところ、人事担当者の作業工数が削減され、データの同期・反映がスムーズになったという事例を紹介。
加えて、1000人以上の従業員を抱える企業でも、ジンジャーの導入で人事データ改革を成し遂げた企業が出てきていると話す。
ある企業では、人事データが複数のシステムに点在し、経営層が必要なときにデータを参照しにくいことが課題だった。また、各種申請業務で紙ベースやExcelの業務があり、現場の負担になっていたという。
しかし、ジンジャーの導入後は、統合型のデータベースによって経営層が迅速にデータを出力できるようになった。勤怠や給与業務も、システム上でデータが連動したため人事担当者の負担が軽減された。加えて、申請フォームをジンジャー上で作成できるようになり、申請業務の工数を削減できている。
こうした事例を踏まえつつ、冨永氏が強調するのは、「正確性」「網羅性」「一貫性」「最新性」「適法性」の要素を兼ね備えた「正しい人事データ」を整備することの重要性だ。

「これら5つの要素がそろうことによって、初めて人事データが『使えるデータ』となります。組織をさまざまな角度で分析し、経営にインパクトのある施策を検討、必要に応じて個人へのアプローチまで実現できるのが、1つの統合データベースにする最大のメリットなのです」(冨永氏)
正しいデータを常に保持できる人事データ基盤を構築することが、これからの人事に求められている。
正しい人事データで組織の“勘”を“確信”に変える
クラウド型人事労務システム「ジンジャー」
ジンジャーは、人事労務における正確で一貫性のある従業員情報や組織データの管理ができるクラウド型人事労務システムです。人事データを適切に管理することにより、業務の効率化、労務リスクの回避、戦略人事の推進の実現をサポートします。
詳しくはこちら:https://hcm-jinjer.com/