HTML5プロフェッショナル認定試験は、マークアップ技術を対象に、その知識と技術力を認定する試験。レベル1では、HTML5、CSS、レスポンシブWebデザインなど、基礎的なマークアップ技術を試験対象範囲にしている。また、レベル2の試験対象範囲は、レベル1よりも高いレベルのマークアップ技術に加え、JavaScriptなどのWebアプリ技術を対象範囲にしている。
同試験は開始から約3年が経過。最近は受験者数が倍々で伸びる勢いだという。一方で、HTMLを取り巻く「適用分野の拡大」「部分技術の陳腐化」「新技術の取り込み」などの環境は次々と変化。今回の改定は、そうした変化に対応することが目的だとLPI-Japanは説明している。
資格体系と認定される人物像の変更点
次のレーダーチャートは、レベル1とレベル2のスキル認定の対象範囲を比較したものだ。赤枠で囲まれているのは、資格体系の変更箇所である。バージョン1.0(以下、Ver1.0)では「ビジビリティ」「オフラインWebアプリケーション」だったものが、バージョン2.0(以下、Ver2.0)ではそれぞれ「グラフィックス」「通信・デバイスアクセス系API」に変更された。
次表は対象範囲の項目の内容で、赤字部分が今回改定された箇所である。
スキル | 内容 |
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HTML/HTML5マークアップ | HTML5に関するタグの用途、構造の組み立て方に関する技術 |
JavaScriptプログラミング | JavaScriptを使って、動的なWebコンテンツを作成する技術 |
グラフィックス(Ver1.0では「ビジビリティ」) | JavaScriptやCSSなどを用いて、動的にグラフィックスを生成したりアニメーションを実現したりする技術 |
マルチメディア | 3D・動画・音声ファイルなどのマルチメディアコンテンツの表示・再生に関する技術 |
レスポンシブWebデザイン | 1つのソースで、スマートフォンなどの様々なデバイスの画面サイズに対応させるための技術 |
ユーザビリティ | JavaScriptやCSSなどを用いて、デザイン仕様に沿った見やすい表示や操作しやすいコンテンツを作成するための技術 |
通信・デバイスアクセス系API | JavaScriptからクラウドと通信をして情報の送受信を行ったり、センサーなどのデバイスにアクセスしたりする技術 |
パフォーマンス | ストレージや並列処理を使ってコンテンツを効率よく高速に動作させたり、オフラインでも動作する仕組みを作るための技術 |
また、認定される人物像についても、次表のような変更がある(赤字部分が変更箇所)。
Ver1.0(現行) | Ver2.0(新版) |
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Ver1.0(現行) | Ver2.0(新版) |
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出題範囲の変更点
レベル1では、サーバー関連技術に関する出題を削減するとともに、HTML5で何ができるかの知識や、Webアプリの知識を問う質問が増える。具体的には次のように出題範囲を変更する(Ver2.0の出題範囲の詳細はこちら)。
- 「1.1.3 ネットワーク・サーバ関連技術の概要」を削除
- 「1.3要素」の内容を再構成し、廃れた要素等の範囲を除外
- 「1.5 オフラインWebアプリケーション」を「1.5 APIの基礎知識」へと名称変更し、オフライン以外の重要なAPIを多く取り入れた
「1.5 APIの基礎知識」の試験問題は、解答するのにJavaScriptやプログラミングの知識は必要ない。「1.1.3 ネットワーク・サーバー関連技術の概要」が除外されたのは、主な受験者がWebクライアント側の制作に携わる人であることに配慮したため。Ver2.0では認定対象としてWebディレクターをより意識したという。
レベル2では、スマートフォンなどの携帯デバイスへの対応ができる技術を出題範囲に追加。センサー情報などを扱うHTML5アプリの開発に対応した。また、セキュリティも出題範囲に追加された。これらを踏まえ、出題範囲は次のように変更される(Ver2.0の出題範囲の詳細はこちら)。
- 全体の構成を見直し、APIの追加と再分類を行い、主題番号を振り直した
- 「2.6 History API」を、Ver2.0では「2.2 Webブラウザにおける JavaScript API」に取り込んだ
- 「2.3 グラフィックス」は、Ver2.0では「2.3 グラフィックス・アニメーション」にタイトルを変え、「2.7.2 Timing control for script-based animations」を取り込んだ
- 「2.4.1 video要素、audio要素」といったメディア要素自体は、Level1にあり、レベル2ではAPIを主な出題対象とするため、「2.4.1 メディア要素のAPI」にタイトルを見直し
- 「2.8 ストレージ」は、Ver2.0では「2.5 ストレージ」にタイトル番号を変え、「2.5.4 バイナリーデータ」を追加
- 「2.9 通信」は、Ver2.0では「2.6通信」にタイトル番号を変え、「2.6.3 Server-Sent Events」を追加
- 「2.7デバイスアクセス」を新たに追加し、「2.10.1 Geolocation API」を取り込み、「2.7.2 DeviceOrientation Event」を追加
- 「2.12 パフォーマンス」は、Ver2.0では「2.8 パフォーマンスとオフライン」にタイトルを変え、「2.11 Web Workers」、「2.12 High Resolution Time」「2.5 オフラインアプリケーションAPI」「2.7 Page Visibility」「2.12 Navigation Timing」をここにまとめた
- 「2.9 セキュリティモデル」を追加。「2.9.1 クロスオリジン制約とCORS」「2.9.2 セキュリティモデルとSSLの関係」を含む
レベル1と異なり、レベル2では全体的な見直しが行われたほか、「2.9 セキュリティモデル」の追加などで出題範囲が増えている。セキュリティを追加した背景には、HTML5で開発されるスマホ向けアプリケーションで、スマホ側にデータをキャッシュするケースが増えていることが背景にあるという。試験範囲が広がり学習の負担が増えそうだが、取り上げる技術範囲を限定するため、大幅な負担増とはならないだろうとLPI-Japanでは述べている。
出題範囲の項目ごとに改定箇所を確認したい場合には、こちら(PDF)を参照してほしい。
試験の概要
レベル1の試験時間は90分、受験料は1万5000円(税抜き)、出題数は約60問。レベル2の試験時間は90分、受験料は1万5000円(税抜き)、出題数は40〜45問。試験方式は両レベルともCBT、受験申し込みはピアソンVUEにて。
Ver2.0になった試験は2017年3月1日から配信が開始されるが、それから6か月間はVer1.0の試験も並行して配信が続けられ、受験者はいずれのバージョンも選択できる。また、バージョン(や試験番号)が違っても試験は同一科目であり、通常の再受験ポリシーが適用される。不合格になった試験を再び受験できるのは、バージョンを変えても受験日の翌日から起算して5日目以降となる。
なお、今回の改定により、ピアソンVUEにて受験申し込みを行う際の試験番号と試験名は次のように変わる。
- レベル1
- 試験番号:HTML5L1-200
- 試験名:HTML5 Professional Certification Level.1, version 2.0
- レベル2
- 試験番号:HTML5L2-200
- 試験名:HTML5 Professional Certification Level.2, version 2.0