法人向けオンライン研修「テックアカデミーIT研修」を運営するキラメックスは、「企業のリスキリング実施に関する調査」の結果を発表した。同社のメールマガジンの配信先の企業のうち120社(1〜100名:57社、101名〜1000名:35社、1001名〜5000名:19社、5001名以上:9社)を対象に実施したもので、調査期間は、2021年8月27日〜9月1日。デジタルトランスフォーメーション(DX)に対応できる高度なスキルを持った人材を育成するためにリスキリングが世の中で注目されている中、実際に企業においてもリスキリングに対して関心が高まっているかを確認することを目的とする。
同社は調査の結果について、以下のように述べている。
「社内でリスキリングに取り組んだことはありますか。(1つ選択)」という問いに対し、「現在、取り組んでいる」と回答した企業が37.5%、「取り組んだことはあるが、現在は取り組んでいない」と回答した企業が3.3%で、4割以上の企業がリスキリングに取り組んでいる。「現在、取り組んでいる」と回答した企業のうち、従業員数で比較したところ、従業員数100名以下の企業は35.5%、101名以上の企業は64.5%と、従業員規模が大きい企業のほうがリスキリングに取り組んでいるもよう。また、「取り組んだことはないが、今後取り組む予定」と回答した企業が26.7%で、約7割の企業がリスキリングに興味を持っていることが分かった。
一方で、「取り組んだことはなく、今後も取り組まない予定」「不明」と回答した企業は、取り組まない理由について「やり方がわからない」「コストがかかる」「従業員に任せている」という理由から取り組まないケースが多いことようだ。
「会社としてリスキリングに取り組み始めたのはいつ頃からですか。(1つ選択)」という問いに対し、「半年〜1年前」から取り組み始めた企業が19.8%と最多。「5年以上前」「2年前」と回答した企業が18.5%となっており、リスキリングの開始時期は企業によってばらつきがあることが分かった。
「リスキリングに注目している背景、企業課題について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対しては、「従業員によってITスキル、リテラシーにばらつきがある」と回答した企業が64.2%と最多、「社内のIT人材の不足」が次いで42.0%だった。企業で必要なITスキルを身に付けた人材の確保に対して課題を感じている企業が多く、そのような背景からリスキリングに興味を持っているもようだ。
「企業内でのリスキリングの位置付けについて当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対し、「社内研修(業務時間内)」と回答した企業が80.2%と最多で、リスキリングも社内研修として業務時間内に取り組むことを推奨している企業が多いことが分かった。
また、「リスキリング実施前までの、従業員の育成や自主的なスキルアップの取り組みの有無について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対しては、「新入社員研修の実施」「OJTの実施」「その他社内研修の実施」と回答した企業が半数以上を占めた。
「リスキリングの対象となる従業員について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対し、「社員(技術職)」と回答した企業が76.5%と最多、「社員(ビジネス職)」が次いで70.4%だった。
また、「リスキリングの対象となる従業員の階級について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対しては、「一般社員クラス」「係長・主任クラス」が共に72.8%と最多で、「課長クラス」が次いで64.2%だった。「経営者・役員クラス」「部長クラス」が取り組む企業も見受けられたが、いずれも40%未満。
さらに、「リスキリングの対象となる従業員の年代について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いには、「30代」と回答した企業が82.7%と最多、「40代」が次いで69.1%、「20代が」61.7%、「50代」が40.7%、「60代」は14.8%となった(それ以外の年代は10%未満)。
「リスキリングに取り組んでいる学習内容について具体的に教えてください。リスキリングに取り組んでいない場合はその旨ご記載ください。(自由記述)」という問いに対し、「IT基礎(ITパスポート等)」「ノーコードに関連する技術」「データサイエンス」などの回答が多く、ITに関する基礎知識や、業務改善に直結する内容を学習している企業が多いことが明らかになった。
「リスキリングに取り組んだ従業員へのインセンティブの有無について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対し、「インセンティブはない」と回答した企業が40.7%と最多で、「資格や試験等の結果次第でインセンティブを検討」が次いで32.1%だった。「報酬の増加」「昇格」などインセンティブを与える企業も存在する一方で、リスキリングに取り組むことが従業員として当たり前と捉える企業が多いと推測される。
「リスキリングの手法について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対し、「外部研修サービスの利用」と回答した企業が54.3%と最多、次いで「学習動画サービス(有料)の利用」が48.1%だった。いずれの手法も約半数の企業が利用していることから、複数の手段を活用してリスキリングに取り組む企業が多いことが分かった。一方で、「スキルを持った従業員が他の従業員へ教える、内製資料の活用など」を選択した企業も一定数おり、外部のコンテンツを活用するだけでなく一部内製化も検討していると推測される。
「リスキリングのよかった点について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いに対しては、「まだ効果を実感できていない、リスキリングに取り組んでいないので不明」と回答した企業が37.0%と最多。「今後の事業展開に必要なスキルを身につけた従業員が増えた」「自発的にリスキリングに取り組む従業員が増えた」などのメリットを感じている企業も一定数ある。
一方で、「リスキリングの悪かった点について当てはまるものを選択してください。(複数選択)」という問いへの回答からは、リスキリングの効果を実感できるようになるまでには時間がかかり、継続的に取り組む必要があることが分かった。他にも「従業員によって実施状況や学習結果のばらつきがある」が悪かった点として挙がるなど、従業員のリスキリングに対する意識や個々の学習スキル、スケジュールによって進捗の差が生じやすいことが推測される。
「今後のリスキリングの実施について当てはまるものを選択してください。(1つ選択)」という問いに対し、「取り組む予定」と回答した企業が79.0%と最多となった。「今後リスキリングを検討している内容、目標や展望があれば教えてください。(自由記述)」という問いに対しては、現在実施している内容を継続する企業が多く、新たに取り組む内容としてはDX関連、データサイエンス、Webマーケティング、AI関連などのITスキルの習得を目指す企業も多く見受けられた。