総合転職エージェントのワークポートは、企業の採用担当者173人を対象に、リスキリングについてアンケート調査を行った。調査期間は2021年9月14日~22日。
リスキリングに関する施策を実施しているか聞いたところ、「実施している」と回答した人はわずか5.8%だった。「実施していない」と回答した人が74.0%、「実施していないが検討中」と回答した人が20.2%となり、94.2%が、現在リスキリング施策を実施していないことが分かった。
リスキリングを実施していない理由として、「現状特に必要としていない」(システム開発・情報通信)という意見のほか、「リスキリングを行う上で、社内的なマンパワー、ノウハウ、コストが見えていない。また、効果として具体的に期待できる内容が不透明なため」(システム開発・情報通信)など、実施に踏み切れない理由を挙げる採用担当者も見られた。
一方で、リスキリング施策を実施している企業にどのような施策を行っているのかを聞いたところ、「県内大学と提携し、大学のカリキュラムを受講」(建設業)や、「グループ内ITスクール活用による資格取得とあわせた職務内容のレベルアップ」(システム開発・情報通信)など、社内外のカリキュラムや設備を活用してリスキリング施策を行う様子がうかがえた。
また、リスキリング施策が社員に与えるメリットとして、業務の幅を広げ、スキルのベースアップができるなどの意見が挙がった。その一方で、時間の制約やマインドセットの課題、技術取得による転職リスクなどのデメリットも挙がった。
実施を検討している企業の中には、現在社内でDX化プロジェクトを模索しているため「社員にDX化に対応できる力を身につけさせたい」とする意見が散見された。
リスキリング以外に社員のスキルアップを支援する取り組みを行っているか聞いたところ、「行っている」と回答した人は59.5%だった。リスキリングを実施している企業はまだ少数ではあるものの、何らかのスキルアップ支援を行っている企業は半数を超える結果となった。
取り組み内容としては、現職のスキルアップのための研修を社内外のカリキュラムを活用して行う企業が大多数であった。その他にも、自己啓発やマネジメントスキル、コミュニケーションスキル、ビジネスマナーなどを学べるセミナーを実施したり、書籍購入や外部機関の研修・講座受講、資格取得のための費用を負担したりするなど、金銭的な補助でスキルアップを支援する企業も見受けられた。中には、スキルの幅を広げるために副業を推奨していると回答した企業もあった。
8月に全国の転職希望者に実施したリスキリングの意識調査によると、リスキリングという言葉を知らないとした人は約7割という結果であり、今回の調査結果を見るとリスキリングを実施している企業がまだまだ少数派だということは妥当な結果であるといえる。しかし、8月の調査結果によるとリスキリングを受けたいと回答した人は85.2%で、リスキリングへの意欲は高いことがうかがえる。企業は社員の意欲をどのように受け止め、今後の取り組みに生かしていくかが課題となるだろうと、同社は述べている。