登壇者

佐藤 翔(さとう しょう)氏
株式会社Hakuhodo DY ONE 上席執行役員
2006年アイレップに新卒入社。営業としてキャリアをスタートし、入社3年目でチームマネージャーに就任後、局長や本部長を歴任し、2021年にアイレップの取締役に就任。この間、グループ会社への出向も通じた多様なマネジメントを経験。現在はHakuhodo DY ONEの営業組織を管掌。

山本 悠太(やまもと ゆうた)氏
株式会社Hakuhodo DY ONE 人事・総務本部
メディアプランナーや営業に従事後、2021年に人事に異動、採用の責任者に着任。2023年に育成部門の責任者と兼務となり、若年層~マネジメント層の能力開発や、組織開発を通じたONE社の活性化に努めている。

坂井 風太(さかい ふうた)氏
株式会社Momentor 代表
DeNA入社後、事業責任者、子会社代表を歴任。その後、人材育成責任者として、学術理論に基づいたマネジメント基盤を構築。体系的かつ実践的な内容が好評を博し、大企業・スタートアップ・国立大学など、210社を超える組織にプログラムを提供。『PIVOT』『TBS NEWS DIG』『ReHacQ』『News Picks』など、YouTube動画が累計500万回再生を突破。
マネジメント研修を経営層から始める重要性
Hakuhodo DY ONEは、博報堂グループのアイレップとDACが統合して2024年に設立した会社。役員9名はバックグラウンドが異なるため、マネジメント方法も多様で、これにどう一貫性を持たせるかが課題だった。
同社の山本氏は、「弊社の中心事業のデジタル広告は無限にやり方を追求できるので、『やればやるほどいい』という根性論がマネジメントの一部には存在した」と課題を振り返る。人事としても人材育成やピープルマネジメントの正しい手法を学ぶ必要性を痛感していたという。
そこで、坂井氏によるピープルマネジメント研修「組織基盤構築プログラム」を経営層が受講することになった。
山本氏は、社員の大半を占めるメンバーを直接指導する若手マネージャーから研修を受けることも検討したが、「経営層のマネジメントが変わらなければ、会社全体も変わることはできない」と判断。まずは経営層から受講してもらうことを決めたという。
上席執行役員としてプログラムを受講した佐藤氏は、まず経営層からマネジメントを学ぶ重要性を次のように語る。
「役員の平均年齢は40代後半であるのに対し、社員の平均年齢は30代前半。年齢によるギャップや年長者の生存者バイアスを取り払うためにも、経営層から学ぶことは重要でした。
また、私は営業の責任者として、ピープルマネジメントの重要性を役員の間で共有できたことも大きかったと感じます。営業マネージャーが、ピープルマネジメントに課題を持って育成に力を入れても、役員は売上数字に目を向けがちです。役員が重要性を理解していることで、現場の人材育成に対するモチベーションも上がります」(佐藤氏)
Hakuhodo DY ONEから依頼を受けて研修を実施した坂井氏も、マネジメント改革においては、まず経営層が敏感に動き、新しいことを進んで学ぶことが重要だと主張する。
坂井氏は、多くの会社の経営層が「自分はマネジメントが得意」という前提になっているが、経営層こそ生存者バイアスがかかっている可能性が最も高いと指摘。「経営層こそ、改めてマネジメントを学ぶべき。『弊社はミドル層が育っていない』と課題を語っている企業こそ注意が必要だ」と警鐘を鳴らした。

その点、Hakuhodo DY ONEのように「健全な危機意識」を持っている経営層は理想的である。
坂井氏は、「研修の依頼を副社長から直接連絡をいただいて驚いた」と言い、「川上からの組織改革」ができていると高く評価する。経営層の受講姿勢も積極的で、率先して自分たちのマネジメントを変革しようという意欲が見えたという。