IT分野の調査やマーケティング、コンサルティングを行うガートナーは、デジタルビジネスへの関心の高まりを受け、ITを活用できる人材が必要になるといった状況を受け、ITリーダーがおさえておくべきIT人材を取り巻く環境と活用状況を「2017年以降のIT分野に関する展望」として取り上げている。
その内容においては、大きく次の4つが予測されている。
- 2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る
- 2020年までに、日本のIT部門の10%が、IT組織の「一員」としてロボットやスマートマシンを採用する
- 2020年までに、オフショアリングを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする
- 2020年までに、非IT部門が単独で進めるITプロジェクト (開発・運用・保守) の80%以上が、結局はIT部門の支援・助力を求めざるを得なくなる
1.は、多様な産業でデジタル化が進展する結果、引き起こされるとしている。ガートナーが日本国内にて2016年12月に実施した調査によると、「IT人材が不足している」と回答した企業は、全体の83%にのぼり、さらに全体の20.4%が少なくとも現状の1.5倍の人材が必要であると考えているという。
しかし、既存の人材のスキル転換は容易ではないため、ミスマッチに起因する質的な人材不足が顕著化するとガートナーは予測しており、ITリーダーは「能力(ケイパビリティとキャパシティ)の確保」という視点を持ちながら人員の確保を優先的に取り組む必要があると提言している。また、適合性の高い分野においては、「人」にこだわらず、スマートマシンやオフショアリングも選択肢に含めるべきだと加えている。
2.は、1.の人員不足解消策の1つとして、IT組織の一員にスマートマシンやロボットを採用する企が増えるという予測に基づくもの。ガートナーの調査によると、「コスト面の有益性にかかわらず、新しい技術やサービスをシステム開発/運用面で積極的に導入したい」と考えている企業のIT部門は約1割程度にとどまったことから、2020年までに実際の導入に発展するのは10%程度になるとしている。
3.は、国内でのIT人材調達が困難になったIT部門の一部が、オフショアリングによる人材調達に取り組み始めていることを受けての展望となる。その一方で、コスト削減を主な目的としたオフショアリングは、現地コストの急増や日本との品質の差、生産性の低さや改善スピードの遅さなどから伸び悩んでおり、疲弊したIT部門の中には、オフショアリングの縮小を検討するケースがみられるという。このような現状から、コスト削減を目的とするオフショアリングは低下し、逆に人材獲得を目的とするオフショアリングが上昇すると予測している。
4.は、企業の非IT部門(マーケティングや営業、商品企画など)が、デジタルビジネスに関連するプロジェクトにおいて、社外のITベンダーと組み、プロジェクトを推進するケースが見られているが、その取り組みの危うさを指摘する声が上がっていることが挙げられる。
ガートナージャパンのリサーチ部門マネージング バイス プレジデント山野井聡氏は「非IT部門が単独で進めるITプロジェクトは、ITプロジェクト管理の経験に乏しいことに加え、ITセキュリティの観点から専門的な立場による監視などが必須である。また、確固たる安定したアーキテクチャやデータ基盤が提供されてこそ、デジタルビジネスへのチャレンジが可能になることから、IT部門は非IT部門との信頼を高めながらデジタルビジネス関連プロジェクトに主体的に関与すべき」と述べ、現状に警笛を鳴らしながら本来あるべき姿を提言している。
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