人事データ活用の必要性が高まる背景
人事データ活用の必要性が高まる背景の一つは、やはりDX(デジタルトランスフォーメーション)です。パーソル総合研究所の調査では、人材マネジメントにおけるデジタル活用意向に対して75.5%が「進めた方がいい」と回答しているように、デジタル化とデータ活用の流れは、人事の世界においても大きなトレンドとなりつつあります。
また、企業の市場価値の構成要素が、これまでの「モノ・カネ」に代表される有形資産から、変化に対応するためのアイデア、テクノロジー、ブランディングといった無形資産とそれを生み出す「ヒト」へと移行しつつあります。「ヒト」の力が企業価値に直結する時代になったわけです。必然的に、人材戦略や人事施策の重要性は増しています。
さらに企業には、ISO30414に代表される人的資本の開示指標やコーポレートガバナンス・コードの改定という形で、人的資本に関する考え、進捗、取り組みを開示する責任が求められつつあります。2022年に入って、企業の非財務情報、特に人的資本について、開示すべき内容の指針を政府が作成中であることが報道されました。各企業で人事データの収集や状況把握が必要となると予想されます。
このように経営課題と人事課題が緊密化する中で、企業人事は、管理的な機能からより戦略的な機能へと転換が求められています。その実現においては、HRテックの進化を背景として、データ・事実に基づいた判断精度の向上や勘に頼らない科学的な意思決定アプローチが必要とされ始めています。
例えばいま、「デジタル人材の育成」を目標に掲げ、3年後、5年後の企業の成長につなげようとする取り組みが増加傾向にありますが、こうした人事施策の進捗・ギャップを把握し、効果的な育成や適所適材の配置を実現するためにも、人事データの活用が必要です。人事部門だけでなく経営層から現場管理職に至るまで、実務に必要な情報を提供できることが求められているといえます。